- 著者
-
檜垣 恵
坂根 剛
- 出版者
- 聖マリアンナ医科大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1994
慢性関節リウマチ(RA)は関節滑膜を炎症の主座とし軟骨・骨破壊を来たす原因不明の慢性炎症疾患である。関節滑膜には、血管新生、リンパ球浸潤と共に滑膜表層細胞の重層化が認められパンヌスが形成される。このパンヌスはA型のマクロファージ様細胞及びB型の線維芽細胞様細胞からなるが、B型滑膜細胞はA型滑膜細胞の産生するインターロイキン(IL)-1や血小板由来増殖因子(PD-GF)などのモノカインに反応して増殖することも明らかにした。さらに活性化されたB型滑膜細胞は種々のサイトカインと共にコラゲナーゼ、ストロメライジンなどのプロテアーゼ及びプロスタグランジン(PGs)を産生して軟骨・骨破壊を引き起こす。そこで、RAに対する治療戦略としてはB型滑膜相棒の増殖・活性化を阻害することが重要と考えられる。そこでわれわれはビタミンD_3の滑膜細胞増殖抑制効果を検討した。活性型VD3は用量依存性に滑膜細胞の増殖を抑制した。コントロールとして用いたレチノイン酸やデキサメゾンにはこの作用は認められなかた。RA由来、OA由来の滑膜細胞でVD3に対する感受性の違いはなく、線維芽細胞株WI-38には作用しなかった。さらにIL-6及びコラゲナーゼ産生をデキサメサゾンと同様に抑制したが、TIMPの産生には影響しなかった。又、ゲラチンザイモグラフでもコエアゲナーゼ活性の低下を認めた。ゲルシフト法によりVD3添加でIL-1刺激時の滑膜細胞の核蛋白AP-1の抑制が認められた。細胞周期に与える影響ではDNAヒストグラムよりVD3添加によりG1期での阻害が認められ、ノザンプロットでサイクリンD1の発現低下が認められた。以上、活性型ビタンミンD3が滑膜細胞の増殖及び活性化を抑制することが明らかになった。ビタミンD_3のメディエーターと考えられているC18/C2セラミドおよびHerbimycinなどのチロシンキナーゼ阻害剤及びチロシンホスファターゼ阻害剤(Orthovanadate)の作用検索をしたが滑膜細胞に対しては抑制効果はなかった。サイトカイン産生などの活性化抑制に関しては転写因子AP-1の抑制によるものと考えられた。増殖抑制に関してはデキサンサゾンとは異なる活性である。c-mycの発現抑制はなかったが、サイクリンD1の発現抑制によりG1アレストが起きていると考えられた。このような免疫調節作用藻有する活性型ビタミンD3の作用はマン液関節リウマチの治療薬剤としての可能性を示唆した。