著者
櫛引 夏歩 望月 聡
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.172-182, 2021-02-09 (Released:2021-02-09)
参考文献数
29
被引用文献数
1

本研究の目的は,第一に境界性・自己愛性・演技性・回避性・依存性パーソナリティ障害傾向(PD傾向)と獲得的セルフ・モニタリング(獲得的SM)および防衛的セルフ・モニタリング(防衛的SM)との関連を検討すること,第二にPD傾向がSMを媒介して自己像の不安定性に及ぼす影響について検討することであった。大学生・大学院生297名を分析対象とした質問紙調査を行った。結果より,獲得的SMに対して演技性PD傾向は正の関連を,依存性PD傾向は負の関連を示し,防衛的SMに対して境界性・演技性・回避性PD傾向は正の関連を,自己愛性PD傾向は負の関連を示した。また,自己愛性・演技性・回避性PD傾向において,防衛的SMの下位因子を媒介して自己像の不安定性に影響することが示された。本研究の結果から,演技性・回避性PD傾向において,他者志向的なSMを行い,他者や状況のような外的要因の影響を受けることが自己像の不安定性につながることが示唆された。