著者
大門 雅夫 福澤 茂 小沢 俊 稲垣 雅行 諸岡 茂 杉岡 充爾 櫛田 俊一
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.415-421, 1999-06-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15

川崎病は,急性の全身性中小血管炎およびそれに伴う臓器炎であり,なかでも冠状動脈炎およびその後遺症による冠動脈瘤が,臨床上予後を大きく左右する.冠動脈瘤の合併は,加藤らの報告によれば,その16.2%に認められ,その多くは1~2年の間に退縮し,最終的に冠動脈に閉塞を生じるのは2%と報告されている.そのほとんどは小児期に発症するが,冠動脈における病理学的変化はその後も進行し,成人期に冠動脈疾患として発症しうることが知られている.今回我々は,小児期に川崎病に罹患し,その後無症状にて十数年を経過したのち,成人期にその後遺症と思われる急性心筋梗塞を発症した2症例を経験した.症例は22歳男性と24歳女性.いずれも急性心筋梗塞にて当センター入院.胸部X線像にて冠動脈起始部の石灰化像を有し,冠動脈造影にて巨大冠動脈瘤およびそれに伴う急性冠動脈閉塞を認めた.本2例は,成人期に急性心筋梗塞を発症した,川崎病後遺症と思われる冠動脈瘤を証明しえた貴重な症例と考えられた.
著者
佐藤 寿俊 神田 順二 小寺 聡 櫛田 俊一 橋本 亨 鈴木 勝 樋口 和彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.124-128, 2007

症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.