著者
菅 智津子 樋口 和彦
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.145-155, 2017 (Released:2019-03-19)
参考文献数
16

二項関係から三項関係移行期にある重度・重複障害児の共同注意行動の発現過程について、事例を通して検討した。人との二項関係では、やりとりが安定した後、対象者が大人の顔を見る行動の出現回数、場面、持続時間が増加した。物との二項関係では、対象者が物に注意を向け、単純な操作から複雑な操作ができるようになった。物を介した人とのかかわりでは、(1) 物とのかかわりが優位な段階、(2) 物にかかわりながらも人の存在を明確に意識している段階、(3) 物と人を関連付け、物への注意を他者と共有してかかわる段階、という順序で変容がみられ、「視野内の指差し理解」「交互凝視:確認」といった初期の共同注意行動が発現した。対象者の変容過程から、重度・重複障害児の共同注意行動の発現を促す具体的な支援が明らかになった。
著者
上田 早智江 高田 真史 東條 かおり 櫛田 拳 髙木 豊 樋口 和彦
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.25-34, 2023-03-20 (Released:2023-03-21)
参考文献数
18

COVID-19の感染拡大により,長時間の衛生マスク(以下,マスク)の着用が必要となった。そこで,この長期間のマスク着用による皮膚性状の変化を客観的に捉えるべく,本研究では,マスク内の温湿度環境を計測するとともに,マスク内の温湿度環境の角層への影響を評価した。また,長時間のマスク着用による皮膚性状の変化の実態を調査した。その結果,マスク内は高温多湿であり,マスクを外すことで急激な温湿度の変化が起こること,くわえて,軽度な運動負荷を伴ったマスク着用では,30分という短時間でも角層の質の変化を誘発していることが明らかとなった。長期間のマスク着用の影響解析においては,マスクの内側の皮膚性状は,外側の皮膚と比して,バリア機能が低く,ターンオーバーが亢進し,敏感な状態であることが明らかとなった。さらに,遊離脂肪酸の比率が高い皮脂が存在し,広範囲にマスクとの「こすれ」が生じることで,より皮膚性状が悪化する環境が形成されていることがわかった。
著者
野村 知子 天野(吉田) 恭子 中島 幸範 高妻 和哉 須摩 茜 樋口 和彦 杉山 義宣 西村 直記
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.89-99, 2019-10-01 (Released:2019-10-24)
参考文献数
39

クロロゲン酸はコーヒー豆に多く含まれ,血管機能改善作用を有することが知られている.本研究では,クロロゲン酸飲料の単回摂取が冷水負荷後の末梢部皮膚温および皮膚血流に及ぼす効果について検討した.健常女性24名を被験者とし,クロロゲン酸飲料(クロロゲン酸270mg含有)あるいはプラセボ飲料を用いたランダム化プラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験を実施した.試験飲料摂取50分後に水温15℃の水浴に1分間両手を手関節部まで浸漬する冷水負荷試験を実施した際の指先の皮膚温と皮膚血流の変化を観察した.試験完遂者は21名であった.クロロゲン酸飲料摂取時の冷水負荷後の皮膚温の回復はプラセボ飲料摂取時と比較して有意に高く,同様に皮膚血流の回復もクロロゲン酸飲料摂取時に有意に高かった.以上の結果より,クロロゲン酸飲料摂取は冷水負荷により低下した皮膚温および皮膚血流の回復を早める効果があることが示唆された.
著者
佐藤 寿俊 神田 順二 小寺 聡 櫛田 俊一 橋本 亨 鈴木 勝 樋口 和彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.124-128, 2007

症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.
著者
樋口 和彦
出版者
横浜市立北綱島特別支援学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

重度重複障害時の期待感が心拍に影響し、心拍が期待感を計る尺度となり得るか検討した。本研究では実際の指導場面において、重度重複障害の子どもが「学習の状況を把握しやすい手がかりの選定と提示方法」、「状況理解の程度」等を、拍数を利用してアセスメントを試みた。方法としては、対象児に、パルスオキシメータを装着し、対象児とパルスオキシメータを同時にビデオ撮影し、教材の呈示の仕方や声かけの仕方の違いによる期待心拍反応の出現比率を比較した。本実験に先立ち、プレ実験として訪問指導場面の行動をビデオ撮影し、期待心拍反応と思われる変化を観察した。その結果、タンバリンや太鼓など、大きな音を伴う活動の始まりに心拍の低下が見られることがあった。しかし、特定の場面で必ず反応がある訳でもないことも示唆された。様のアプローチをしていると考えられる活動において、ある日は心拍の低下があり、ある日は低下が見られないことも多かった。対象児(小学2年:重度重複障害)は、かかわりがない場面においても心拍数の変化はあり、覚醒状態や気温等等が影響していた。プレ実験後、活動で使う教材を提示するときに、(1)音声によるインフォメーション、(2)音声+触覚によるインフォメーション、(3)音声+触覚+教材の出す音によるインフォメーションの3パターンを作って係わることにした。その結果、(1)>(2)>(3)のように期待心拍反応の頻度は高まっていた。しかし、期待心拍反応が見られない試行も多く、重度重複障害児の場合、期待心拍反応を、正確に見いだすことが困難であることが示唆された。これには、その日の体調等も影響を与えていると予測される。今後は、研究を一歩進めて、期待心拍反応が出たと思われる試行と出ていない試行の覚醒状態・体調等の基礎的な情報を加味して観察を行う必要性が感じられた。