著者
櫻井 美佳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アトピー性皮膚炎、掌蹠膿疱症、関節リウマチおよびクローン病等の慢性炎症性疾患において、血清ビオチン値の低下やビオチン投与による症状の改善が報告されているが、ビオチン代謝がこれらの疾患発症にどのように関わるのか、その機構は殆ど明らかにされていない。当研究室の先行研究により、血清ビオチン値とスギ花粉症の発症との間に有意な相関が見られていることから、本研究ではスギ花粉症のモデルマウスやヒト鼻粘膜培養細胞の炎症モデルを用いて、ビオチンが炎症性サイトカイン、ケモカイン、MMPの発現、分泌にどのように関与するのかそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。昨年度までに、アジュバントを用いずに花粉症を誘導するマウスモデル系を確立したが、本年度は、4週齢より約2ヶ月間通常あるいはビオチン除去飼料により飼育したマウスに対して花粉症を誘導し、ビオチンの有無がその症状や分子病態に与える影響を解析した。その結果、精製スギ花粉抗原 Cry j1の局所感作による鼻かきの症状はビオチン(+)と比較してビオチン(-)の方が高い傾向が見られたが、ビオチン(-)についてはPBSでも鼻かきを起こす個体が見られたことから、SPFでない飼育環境では、ビオチンの除去そのものがアレルギー性疾患の発症に関与する可能性が考えられた。現在、鼻粘膜細胞におけるサイトカイン(IFN-gamma、IL-5、IL-4)の遺伝子発現や免疫組織学的解析により好酸球浸潤を検討している。