著者
岡 暁子 櫻江 玲史 中田 稔
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.209-213, 2003-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15

エネルギー代謝における咀嚼の役割を明らかにすることを目的とし,ラットが摂取する飼料の硬度を変化させて,食事に伴って上昇する体温(食後熱産生)を比較した.実験に用いた低硬度飼料の硬度は,通常飼料と比較して約2分の1とした.また,成分と形状は通常飼料と等しくすることで,両飼料が各ラットに与える味覚や嗅覚,摂食時の行動には大きな違いがでないようにした.雄性成熟ラット(n=8)を用いて腹腔内に体温センサーを留置し,24時間絶食後各飼料を与え,食行動,食後熱産生,活動量を経時的に計測した.実験は2回行い,各飼料を入れ替えることですべてのラットは通常飼料,低硬度飼料のどちらも与えられた.1回摂食量,摂食時間,摂食速度は,通常飼料摂取時と低硬度飼料摂取時との間に有意な差を認めなかった.低硬度飼料摂取時における食後熱産生は,通常飼料摂取時と比較して明らかに低下していた.この時の活動量には差が認められなかった.以上の結果から,食後熱産生は食物の性状の影響を受けており,硬度の低い食物を摂取する際には,食後の体温上昇が十分に行われないことがわかった.従って,食物の硬度は,食後の熱産生の上昇に影響を与えていることがわかり,食物をよく咀嚼することは,摂食中のエネルギー代謝機構を活性化させる可能性が示唆された.