著者
權 永錫
出版者
同志社大学
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.167-179, 2006-07

研究ノート(Note)この20年余りは新自由主義に基づいたNPM論が行政改革の基本理念として位置づけられた。政府部門に競争と市場原理や成果主義人事管理の導入、構造改革の推進、企業型政府の模索などあまりにも激しい変化が続く中、行政学の本来的な研究領域が経営学や経済学に侵害されているのではないかとの不安を持ち、韓国で行われている行政革新プログラムを事例に上げ、行政の本来の役割とNPM論の関係を考察してみようと思った。 先ず、韓国における行政改革の歩みを現代史を中心に歴史的な観点からみたうえで、各時代の主な改革の動きと特徴の検討を通じて、現在、行われる韓国の行政改革に対する理解を助けようとした 。 第3章と第4章では韓国行政自治部の政府革新プログラムの柱を成していると思われる、政府樹立以降初めてのチーム制導入の動きとバランス∙スコアカードを用いた成果主義業績評価システム導入、顧客志向の行政システム整備などNPM的な改革政策について詳しく説明した。 第5章は行政自治部の政府革新が抱えている問題や、今後の研究の方向を、NPM論の批判的な立場から考え、公務員に求められるのは管理能力ではなく政策能力であることと政策的能率を求める成果主義が必要であること、多面的能力評価が人気投票化する恐れ、顧客志向行政の現実的な難しさなどに触れた。 最後の第6章では、政策の意味や政策能力と成果主義をどう結びつけるのか、成果を引き出すための政府組織のあり方や行政に対する成果評価システムの構築など、行政学の理論と管理手法を築き上げていくことがこれから先に力を入れていくべき研究課題であることを打ち出した。