- 著者
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歌川豊国 画
- 出版者
- 刊
歌川豊国の女性教訓絵本。『絵本婦女合世佳娥美』の求板、改題本。半紙本3巻合1冊。墨摺り。刊記なし。絵師署名は巻尾に「歌川豊国□」。丁付に乱れがあり、巻号を表す文字が「上」「下」のみであることから、元2巻本を3巻に編成し直したものか。七珍万宝の序は「烏は色黒を不憎して其口を憎む」云々と書き出し、人は外見より立ち居振る舞いを重視すべしという意味合いを示唆する。また豊国の絵ごとの上部に詞書きを有するが、一分万十の跋に「真のきまりの大抵を書ちらしたる合世佳娥美、心をうつして御覧」云々とあるので、詞書きは跋者と同一人か。詞書きの内容は、女性の物言い、物腰、芝居、食べ物、物見遊山、服装、髪、信心、笑い、書見、子持ち、三味線・小唄、化粧、履き物、酒などのたしなみ、振る舞いについて戒めるもの。最後は、新吉原の遊女玉菊と、祇園の梶女の例を出して、女性は身分、職業に拘わらず、日頃のたしなみが大事とする。具体的には、たとえば「わかき女ののちのよをたのみ、じゆずなどもち、またはしやうめうのこゑするはにくひものさ、かならずおよしなさい」などと、若い女の行き過ぎた信心を止めるよう、口語調を交えてやさしく教え諭す。豊国の絵は、硬さの残る若描きであり、猫背で襟元を緩めた女性の描き方に特色が見られる。(鈴木淳)(2017.2)