著者
正垣 幸男 吉田 幸雄
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.38-42, 1956
被引用文献数
1 2

1)京都市北郊八瀬附近に於て, 8月〜9月の候, 人畜に来襲し, はげしく刺咬する種はニッポンヤマブユSimulium(Gnus)nacojapiであり, その他アオキツメトゲブユ, ヒメアシマダラブユ, キアシツメトゲブユ, オウアシマダラブユ等が来襲した.2)ニッポンヤマブユの動物嗜好性に関し, 人体, 牛, 山羊を同時に露出せしめた所, 人体及び牛に比し山羊は隔段少なかつたが, 人体と牛には共にはげしく来襲しこの両者間の差は本実験では判然としなかつた.3)ニッポンヤマブユの夏期における吸血活動の日間消長を観察した結果, 照度の変化によつて最も鋭敏に活動が左右される事を認めた.即ち気温, 風力等が制限因子として働かない場合は最も大きく影響するものは照度と考えられる.又朝夕におけるブユの活動の習慣性も見逃せない問題と考える.4)ニッポンヤマブユの吸血活動に好適な照度は1, 000〜20, 000luxと考えられるが, 真夏の太陽の直射の下, 10万lux以上の条件下に於ても, 活動は減少するも停止はせず, なお相当の吸血が行われる.5)当地区のあらゆる河川について, 幼虫, 蛹の採集を行つた所, ニッポンヤマブユ, キアシツメトゲブユが多く, 次でアオキツメトゲブユ, ヒメアシマダラブユ, クジツノマユブユ, オウアシマダラブユ, クロアシマダラブユ, オウアシマダラブユ, クロアシマダラブユ, ウチダツノマユブユ等が見出された.