著者
正木 宏長
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は、昨年度に続き、水道事業の民間化について研究を行った。日本では水道事業の民間化に際して、委託等の行政契約が用いられている。水道法に定めのない従来型業務委託のほかに、水道法による包括業務委託も存在する。こういった水道事業の委託手法について他の民間化の手法も取りあげつつ、その特徴と法律問題について研究した。研究の際には、委託契約を活用している自治体への実地取材を行い、自治体行政の現実を明らかにすることに努めた。研究の結果、水道事業において、広範な委託が行われていること、他に様々な手法で水道事業の民間化が行われていること、民間化に際して、自治体の規程や国の通達類が重要な機能を果たしているとの知見を得ることができた。現在水道の民営化の議論がなされているが、本研究は、このような議論に法学の面から貢献しうるものであると考える。また、委託契約の実態を明らかにすることで、行政契約の議論の充実にも寄与することができるだろう。成果は論文「水道事業の民間化の法律問題」として立命館法学に掲載が決定している。また、一昨年度の研究成果が、書籍『分権時代と自治体法学』のうちの「都市の成長管理と水道」として刊行された。これは、水道水給水拒否が都市の成長管理手法となっていることを比較法研究によりあきらかにするものである。