著者
正畠 和典 東堂 まりえ 岩崎 駿 安部 孝俊 山道 拓 村上 紫津 曹 英樹 奥山 宏臣 臼井 規朗
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.815-822, 2019-06-20 (Released:2019-06-20)
参考文献数
39

【目的】先天性喉頭閉鎖症(以下,本症)は,出生直後から上気道閉塞症状をきたし,致死的な経過をたどる予後不良な疾患である.本症の治療経験から,本症の治療成績と問題点について検討した.【方法】1982年から2017年までの35年間に当院と関連施設で経験した本症9例を対象とした.各症例の臨床的背景,出生前画像診断,周産期経過,出生後の治療経過,転帰などにつき,診療録に基づいて後方視的に検討した.【結果】本症9例のうち7例に胎児腹水を認めており,7例中5例は中央値在胎21週時にCHAOS(congenital high airway obstruction syndrome)として出生前診断された.CHAOSとして出生前診断されていた5例のうち,心不全の悪化により子宮内胎児死亡した1例を除く4例に対して,出生時の気道確保のため,ex utero intrapartum treatment(EXIT)による気管切開を施行した.EXIT下に気管切開した全例が出生時に救命され,母体にも合併症は認めなかった.CHAOSとして出生前診断されていなかった4例中3例は出生直後に気管切開で気道確保を行ったが,食道閉鎖症を合併した症例のみが救命され生存退院した.出生した症例の在胎週数の中央値は37週,出生体重の中央値は2,015 gで,5例に本症以外の先天異常の合併を認めた.生存退院できた4例のうち,他の先天異常を伴わない2例と食道閉鎖症を合併した1例が人工呼吸器から離脱して長期生存した.【結論】本症のうちCHAOSとして出生前診断された症例に対して,EXIT下の気管切開は児を救命する有効な治療法であった.