著者
武居 寛史
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_318-2_335, 2017 (Released:2020-12-26)
参考文献数
33

合意形成は, 政治学において重要な課題であり, 近年では, 討議民主主義の観点からの検討が活発である。本稿では, 討議という個人間の相互作用と, それにより生じる合意形成という集団の性質の関係について, エージェント・ベース・モデルによって検討を行う。先行研究のシミュレーションでは, 2者間の相互作用による, 意見の変化の積み重ねに基づく合意形成が分析されてきた。しかし, 討議型世論調査のように, 集団での議論が行われる状況も, 合意形成の過程としては考えることができる。シミュレーションで, この2つの過程を比較した結果, 2者間相互作用の方が, 集団相互作用に比べて, 合意が達成されやすいことが示唆された。本稿の結果は, 討議の場を設けた場合に, より合意が生じやすい環境を発見することに貢献しうるものである。