著者
藤峯 絢子 鈴木 久也 太田 恭子 齋藤 美帆 中里 浩樹 武山 陽一 谷川原 真吾
出版者
仙台赤十字病院
雑誌
仙台赤十字病院医学雑誌 = Medical Journal of Sendai Red Cross Hospital (ISSN:09178724)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.49-54, 2014-05-01

先天梅毒は本邦において2009年1月〜2013年2月に16例報告され、近年稀だが重要な母子感染症である。今回、妊娠初期の梅毒検査陽性を見逃され、未治療のまま経過し先天梅毒児を出産した一例を経験した。症例は22歳の初産婦で、妊娠30週2日に胎動減少、性器出血を訴え、前医を受診し胎児心拍陣痛図で遅発一過性徐脈を認め当院に母体搬送された。胎児超音波検査で肝腫大、腹囲拡大、腹水を認め、胎児心拍陣痛図で基線細変動の減少、高度遅発一過性徐脈を認めた。胎児機能不全と診断し、緊急帝王切開を施行、1,715gの女児を娩出、臍帯動脈血pH 7.109、Apgar 1分値1点、5分値5点であった。出生児はRPR陽性、TPHA陽性で、水疱性皮疹、肝腫大、貧血、血小板減少が認められ先天梅毒と診断した。先天梅毒は早期診断・治療で防ぎうる疾患であり、妊娠初期のスクリーニング検査の重要性を再認識した。