著者
山口 利子 武田 千津 中野 静子 北尾 孝司 篠原 信之
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.145-150, 2001-06-15 (Released:2010-07-21)
参考文献数
14

看護婦に対するアンケート調査の結果, 94.4% (167/177) が手荒れを経験し, その悪化対策や予防の目的で71.2% (126/177) がハンドクリーム等を使用していることがわかった.そこで, ハンドクリーム等の使用が手指付着菌の洗浄に対してどのような影響を及ぼすのかを知るために実験を行った.実験は日常的に多く使用されていたザーネクリーム®軟膏 (ZO), プライムローション® (PR) および皮膚保護材のデルマシールド® (DS) の3種類を手指に塗布して行った.塗布後に付着せしめた被験菌の洗浄効果は寒天培地接触法によって測定した.手指の洗浄は, 「無洗浄」「流水洗浄」「こすり洗い」の3通りの方法で行った.その結果, 手指に付着する菌数はハンドクリーム等の塗布の有無にかかわらず差はみられなかった.菌付着手指は「無洗浄」で寒天平板培地にスタンプを繰り返したところ, ZO, PR, DSを塗布したいずれの場合においても, スタンプを9回繰り返しても付着菌が検出された.また, 「流水洗浄」の場合は付着菌の減少はみられたが, 完全には除去されなかった.さらに「こすり洗い」では, 被験菌が大腸菌の場合には, PR, DSでは1回の洗浄で, ZOでは2回の洗浄で除去された.しかし, 被験菌が黄色ブドウ球菌の場合には, 洗浄を9回繰り返しても, PR, DS, OZ塗布のいずれにおいても付着菌が確認された.ハンドクリーム等塗布の手指に付着した菌は, 塗布しなかった手指に比べて除去されにくかった.