- 著者
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加藤 一郎
平賀 紘一
西条 寿夫
近藤 健男
武田 正利
- 出版者
- 富山医科薬科大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
本研究の目的は中枢神経系を含む全身で非ケトーシス型高グリシン血症・脳症の原因蛋白質であるH蛋白質を欠損するマウスを作製し、高グリシン血症・脳症の成因や病態を明らかにすることにある。平成16年度の研究は以下の通りに順調に進行した。1.マウスのグリシン開裂酵素系H蛋白質遺伝子のエキソン1周囲に2か所のloxP部位を導入したキメラマウスを5匹得た。うち2匹が変異遺伝子のgerm-line transmissionを示した。2.上記マウスとCre Recombinase遺伝子導入マウスを交配して、loxP間のエキソン1を含むゲノムDNA領域を欠損したH蛋白質遺伝子ヘテロ欠損マウスを得た。3.抗H蛋白質ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット解析では、ヘテロ欠損体でH蛋白質が50%に減少していることが確認された。4.次にホモ欠損マウスを得るためにH蛋白質遺伝子ヘテロ欠損マウス同士を交配し、その子孫のgenotypeをPCR法およびサザンプロット法で解析した。ホモ欠損マウスは全く得られなかった。ヘテロ欠損体では出生直後に体内出血・体幹異常を示す異常個体が散見された。5.さらに胎生14日目までさかのぼって胎児を遺伝子解析すると、野生型26:ヘテロ欠損33:ホモ欠損0であった。ヘテロ欠損体はメンデル則で予想される数より少ない傾向が見られた。本研究の結果、H蛋白質遺伝子ホモ欠損マウスは全く発生できないか、極めて早期に胎生致死となっていることが示唆され、本蛋白質がマウスの正常発生に必須であることが、はじめて明らかになった。今後H蛋白質が50%に減少しているヘテロ欠損マウスを用いて、H蛋白質がさまざまな臓器ストレスに対する耐性獲得に果たす役割の検討が可能になった。さらに薬剤誘導可能な、あるいは臓器特異的なCre Recombinase遺伝子発現マウスとの組み合わせにより、条件特異的なH蛋白質欠損マウスを作製し肝臓や脳、心臓などの主要臓器におけるH蛋白質の生体内機能を深く探求することができる。