著者
田中 美郷 芦野 聡子 小山 由美 吉田 有子 針谷 しげ子 熊川 孝三 武田 英彦
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.153-162, 2013-04-28 (Released:2013-09-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1

新生児聴覚スクリーニングで難聴が疑われ, 1歳頃より難聴が進行した自閉症スペクトラム障碍及び重度知的障碍を伴う難聴児に3歳11か月時人工内耳を装着させた。本児は聾学校へ入る前から手話を導入した言語教育を受けてきた。本児は現在12歳に達したが, 現在のコミュニケーションは聴覚的言語理解は発達しつつあるものの言語表出は専ら手話である。本児は一時期聴覚過敏症があって人工内耳を拒否するようになった。しかし現在はこれを克服して人工内耳を常用している。本児は社会生活を送る上で必要なskillを実体験を重ねて身に付けつつある。これには両親の熱意はもちろん, 地域社会のいろいろな分野の機関や人々の支援があった。両親は我々のアドバイスにも耳を傾けて, 各方面に働きかけてこの体制を築いてきた。この努力の成果として, 言語発達も含めて社会的経験も積んで本児になりに豊かに育ちつつある。