著者
仲井 真治子 比嘉 美佐子
出版者
琉球大学
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.183-193, 1967-10-01

本研究は, 環境, 年代の違いによる着用色の傾向を検討することを目的に, 沖縄の北部, 中部, 南部, における20∿50代代の沖縄婦人の街着を調査対象に, ルイス・チェスキンの色円板, 及び日本色研式の色彩統計盤を使用して行なった。更に, 沖縄における5カ年の着用色の動向を把握するために, 沖縄の中心都市, 那覇における20∿30代の婦人の街着を調査対象として行った。X^2検定, 標準偏差, 及び偏差積法による資料の分析から次項の結果が得られた。1.沖縄本島の三地域(南部, 中部, 北部)と着用色の関係を, 色相, 明度, 彩度の面から検討した。1)着用率の高い五色相と三地域をX^2検定したが, 有意差がみられた。南部においては寒色が好まれ, 中部においては, 暖色が多く好まれ, 北部においては無彩色に偏っている。という傾向がみられた。2)三地域の明度, 彩度を1から9段階に分けてそれらの分布度を標準偏差で求めた。明度, 彩度ともにσの数値に顕著な差がみられた。中部においては明度, 彩度ともにσの数値が低く, 南部, 北部の順に高くなっている。即ち, 南部, 北部の分布は, 明度は中明度, 高明度に偏り, 彩度は中彩度, 低彩度に偏している。中部における明度・彩度の分布は, 他の二地域に比べてこの傾向が低く, 低明度, 高彩度にも広がっていることがわかった。2.5カ年の着用色の変動をみるために1)14色相, 及びそれの明度, 彩度の5カ年の分布度を標準偏差で求めた。その結果, σの数値は年々減少していく傾向を示している。この傾向は色相において最も顕著で, その次明度, 彩度の順位でσの数値が減少の傾向を示している。全般的にみたσの数値, 及びσ値変動の度合も, 色相, 明度, 彩度の順に高くなっている。沖縄の婦人が色の三属性で一番むつかしいとされているのが彩度であることがわかった。2)5カ年を通しての色の安定度は季節に左右されるもので, 夏季の服色においては, 青緑, 茶, 白が安定度が高く, 黄緑, 青紫, 黒は低い。冬季の服色では, 橙, 茶, 黒が安定度が高く, 赤, 黄緑, 白が低い。季節に関係なく安定度が高い色相は茶で, 季節に関係なく低いのは黄緑となっている。3.年代と着用色の関係は, 20∿30代と40∿50代の間隔から着用色に差がみられた。年代弁別色は, 青, 白, 赤, 赤紫, 黒, 茶, となっている。年代と明度との関係にも差がみられた。年代と彩度の関係が最も顕著であった。今回の服色研究は, 地域差と年代差を1963年夏の資料に限り, 5カ年の服色の動向を那覇における資料に限った。更に20代と30代のみを5カ年の変動の対象とした。今後はそれぞれの要因を全て包含させた調査を各季節ごとに, 毎年継続していくことによって, 沖縄における服色を体系づけたい。