著者
足立 ちあき 毛利 好孝
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.14-21, 2011

<b>目的</b> 新型インフルエンザの集団感染が疑われた高等学校に対する疫学調査,患者への対応等を通して,新感染症発生時の初期対応にかかる課題を明かにする。<br/><b>方法</b> 5 月16日,神戸市内で国内初の新型インフルエンザ患者の発生が確認,報告された直後に集団発生が疑われた高校で,インフルエンザ様症状の認められた高校生14人を対象に,集団検診,PCR 検査および疫学調査等を実施した。<br/><b>結果</b> 渡航歴やインフルエンザ様症状を呈している者との接触歴がある者はいなかった。PCR 検査の結果,14人中 9 人が新型インフルエンザと確定診断された。患者 9 人については,発熱,咳,頭痛,倦怠感等の症状がみられたが,成田空港検疫所で 5 月 8•9 日に確定診断された 4 症例に比べ,発現率が低かった。確定時には,すでに抗インフルエンザウイルス薬の処方等を受け,臨床症状が消失し,感染性の低さも示唆されたため,入院治療が必要でないことが明らかであり,とくに患者発生の多かった神戸市では入院病床数が限界に近づいていたため,9 人全員に対し入院勧告を行わなかった。家族等濃厚接触者にも感染を疑う臨床症状を認める者がいなかったことから,不要不急の外出を控えるよう理解を求めるにとどめた。<br/><b>結論</b> 今回,兵庫県において新型インフルエンザの国内初発例を確認し,早期の段階でまん延状態と言える状況となった経験から,新感染症の発生時には,発生地域から得られる臨床症状,経過等の情報を速やかに収集•分析し,各時点におけるウイルスの特徴や感染力等を見極めた上で,地方自治体において,柔軟な対応をとれる体制を整備する必要があると考える。
著者
毛利 好孝 三村 令児 森本 康路
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.520-525, 2020-07-01

●たつの市民病院は,平成25(2013)年4月に現地建て替えによって新病院が竣工したが,大幅な病床減によっても病床稼働率は回復せず,平成26(2014)年度の病床稼働率は53.1%,経常収支は7億1千8百万円を繰り入れながら8千5百万円の赤字であった.●平成27(2015)年度から地域の医療ニーズに合わせる形で医療機能が大幅に転換され,平成30(2018)年度の病床稼働率は84.5%,基準内繰入後の経常収支は1億1千3百万円の黒字となり経営再建が達成された.●令和2(2020)年4月からは地方独立行政法人化され,新たなスタートを切っている.