著者
水井 裕二
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-10, 2001-06-30
被引用文献数
1

本稿では,先ずこれまでに指摘されている図の機能や問題解決に有効な図の条件の概要を示し,次に図的表現が問題解決に及ぼす効果と,図的表現の指導効果に関する先行研究をレヴューする。そして最後に,算数科教材の一つである「速さ」の非定型的文章題の問題解決に有効な図的表現の条件を提示する。これまでに13の図の機能と,3つの問題解決に有効な図の条件が指摘されている。図的表現が問題解決に及ぼす効果,及び図的表現の指導効果に関する研究は,その数が非常に少ない上,調査対象にも偏りが見られる。「速さ」の非定型的文章題の問題解決に有効な図的表現の条件は,追いつきや出会いに向けての運動が開始される様子,時間の経過にともなって変化する距離や水量の様子,追いついた事態や,出会った事態の仮説がなされ,時間の経過にともなって距離や水量が変化する様子が表現されていることである。