著者
水口 恵美子 中澤 浩一 萱場 桃子 近藤 正英 本田 靖
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.9-21, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
27

冷房装置使用は住宅内の熱中症予防に有効であることが報告されている.2011 年に福島第一原子力発電所事故が発生し,節電対策が冷房装置使用の行動に影響を与えたことが推測される.本研究では,2010 年に調査した夏季における高齢者の冷房装置の使用状況と住宅内熱中症のリスク人口について追跡調査を行い,2011 年夏の冷房装置使用の状況を明らかにした.全国 8 都市(札幌市,仙台市,さいたま市,東京都 23 区,千葉市,神戸市,北九州市,長崎市)における 65 歳以上の高齢者を含む世帯を対象に 2010 年と 2011 年,インターネット調査を行った.2010 年と比べて 2011 年では夏季にエアコンを常に使用する者が減少し,部屋に設置されていても使用しない者が増加した.扇風機の設置割合は増加したが,使用頻度に変化はなかった.本研究では,各年の気温の差異が行動変容に及ぼす影響を制御できなかった.しかし,住宅内熱中症のハイリスク人口が増加傾向にあることから,高齢者に対しては夏季の冷房装置使用について節電の推奨は控え,適切な使用を促進することが望まれる.