著者
春田 道雄 井上 文明 水嶋 丈雄
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.665-672, 2000-01-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
20

アカシジアに対して西洋薬の抗パーキンソン病薬を投与しても効果がなかった症例に, 三黄瀉心湯や桃核承気湯を投与した。非定型精神病1例, 精神分裂病3例, いずれも女性で身体的な証は全て実証であり, 4例とも便秘を認めた。三黄瀉心湯6g (EK-13) をベースに症例1と症例4にはさらに桃核承気湯7.5g (TJ-61) を併用した。4例とも「ムズムズする。いてもたってもいられない」というアカシジアを疑わせる訴えは共通しており,『大黄』を含む三黄瀉心湯を処方することにより数日で症状が消退した。精神科における薬物療法では,アカシジアなどの錐体外路症状への対処が大切であるが, 抗パーキンソン病薬などが奏効しない症例がみられる。このような場合に三黄瀉心湯などの漢方薬を使用することにより, 服薬履行が高まるものと期待された。さらに『大黄』には向精神作用や瀉下作用もあるため, 薬物総量を減量できると思われた。
著者
水嶋 丈雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.691-694, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

パーキンソン病は神経難病である。我々はこの疾患を薬物治療群と薬物治療と鍼灸治療併用群に無作為に群別し,その進行度をホーンヤール度と UPDRS II・III について治療開始から5年間にわたり追跡調査をおこなった。薬物治療群は95例平均年齢64.7才,薬物治療と鍼灸治療併用群は103例平均年齢63.9才,両群において L-dopa 内服量や合併症において差はなかった。結果は,薬物治療群5年経過時にホーンヤール度平均2.1±0.8,薬物治療と鍼灸治療併用群はホーンヤール度平均1.3±0.4となった。また同様に UPDRS II は薬物治療群平均12.2±7.2に対し鍼灸治療併用群平均は7.6±5.0となった。次いで UPDRS III は薬物治療群は平均18.2±9.8に対し鍼灸治療併用群は平均11.9±6.8となり,いずれも反復測定分散分析で有意差を認めた。我々はパーキンソン治療において鍼灸治療を併用することは,その進行抑制に寄与できるものと考える。
著者
水嶋 丈雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.413-421, 2007-05-20 (Released:2008-09-12)
被引用文献数
1

古代中国の「傷寒論」には経絡を意識した記載がある。経絡とは経穴の機能的連絡ルートであるが, 日本の漢方界では目に見えないものとして無視をしてきた。しかし, これを自律神経の作用ルートとして経絡を理解すれば「傷寒論」の条文がよく理解できる。また鍼灸治療の立場からは要穴といわれる経穴は自律神経作用点として重要な意味をもっている。「井」穴はアドレナリン分泌作用, 「栄」穴はIFNγ分泌作用「兪」穴はPGE2分泌作用などのように, 自律神経系への作用を理解することは鍼灸治療の際に重要である。
著者
春田 道雄 井上 文明 水嶋 丈雄
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.665-672, 2000-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
1

アカシジアに対して西洋薬の抗パーキンソン病薬を投与しても効果がなかった症例に, 三黄瀉心湯や桃核承気湯を投与した。非定型精神病1例, 精神分裂病3例, いずれも女性で身体的な証は全て実証であり, 4例とも便秘を認めた。三黄瀉心湯6g (EK-13) をベースに症例1と症例4にはさらに桃核承気湯7.5g (TJ-61) を併用した。4例とも「ムズムズする。いてもたってもいられない」というアカシジアを疑わせる訴えは共通しており,『大黄』を含む三黄瀉心湯を処方することにより数日で症状が消退した。精神科における薬物療法では,アカシジアなどの錐体外路症状への対処が大切であるが, 抗パーキンソン病薬などが奏効しない症例がみられる。このような場合に三黄瀉心湯などの漢方薬を使用することにより, 服薬履行が高まるものと期待された。さらに『大黄』には向精神作用や瀉下作用もあるため, 薬物総量を減量できると思われた。