著者
水嶋 陽子
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10, pp.83-94, 1998
被引用文献数
1

本稿は、高齢女性と子供の関係に生じている、新しい動向の一端を捉えることをめざしている。ここで着目する老年期の今日的特徴とは、夫の死後、女性が独居する時期の出現である。まずアメリカの親子関係研究を概観し、この新局面の分析には、親子関係が双方の交渉により変容しうること、つまり構造的ではなく関係的な性質だとする視角を用いる。すると高齢女性の人間関係形成能力が問題となる。そこで主婦役割を検討し、女性は老年期にも、生活に密着した人間関係形成能力をもつ存在であることを確認する。そのうえで、調査事例を紹介する。事例から明らかになったのは、 (1) 高齢女性は子供を含め広範な人々との間で相互依存的なネットワークを形成している、 (2) 高齢女性は自分のライフスタイルにあわせて、子供との関係を操作している、である。以上より、高齢女性の親子関係には柔軟性があるといえる。最後に、親子関係の柔軟性がもつ今日的な意味を議論する。