著者
安成 哲三 西森 基貴 水戸 哲司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.517-531, 1998-08-25
被引用文献数
1

過去30年間(1964-93)の北半球における地表面と下部対流圏の気温変動を解析した結果、冬季と春季を中心に地表面のみならず、下部対流圏全体で顕著な昇温傾向が確認された。冬季には、中央シベリアとカナダ西北部・アラスカで昇温が顕著であるが、両地域における昇温の鉛直構造に大きな違いが見られた。春季には北米大陸北半部でのみ、下部対流圏全体にわたる昇温が顕著である。地表面から対流圏中部までの気温変動についての3次元回転EOF解析をした結果、地表面・対流圏全体で昇温するトレンドが最も卓越している変動であることが確認された。回転EOF解析の第2成分として、冬季には1976/77と1988/89頃に偏差が大きく変化する数10年スケールの長期変動が存在し、その空間特性は北米、北ヨーロッパおよびユーラシア東部で同じ変動傾向を示す波数3型の構造をしていることが示された。一方春季の第2成分は、10-13年周期の変動を示し、太陽活動の同じ周期帯の変動との関連が示唆された。