著者
水本 一生
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.11, pp.3088-3093, 2014 (Released:2015-05-29)
参考文献数
28

症例は83歳,男性.便秘・腹痛・嘔吐を主訴に来院し,宿便による腸閉塞の診断で入院となった.翌日,腹痛と腹部膨満感が増悪し,Dynamic CTで結腸の拡張と腹水を認め,急性大腸偽性閉塞の診断で緊急手術を施行し,上行結腸から下行結腸にかけて腸管虚血・壊死を認めたため広範囲の結腸を切除し,回腸・S状結腸吻合術を施行した.術中所見および病理組織学的所見より非閉塞性腸管虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia; NOMI)と診断した.術後はsecond look operationは施行しなかったが経過良好で,第28病日に退院となった.NOMIには特異的な身体所見や症状がなく,進行も緩徐で,そのためにしばしば重篤な印象を与えないことがあるが,実は致死的な病態である.急性腹症の診療ではNOMIを念頭に置くことが重要である.
著者
水本 一生
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.747-752, 2015

難治性皮膚潰瘍に対して電子ネットワークを利用した臨床写真画像転送による大学病院と地域病院の診療連携体制を構築し, 診断治療にあたる試みを行ない, その有用性を検討した。2013年4月から2014年3月までの間に75歳以上の難治性皮膚潰瘍の患者で手術を必要とした26例を対象とした。臨床写真を電子メールに添付し共同研究者である島根大学医学部付属病院皮膚科形成外科診療担当医に配信, チャット形式での検討により, 治療方針を決定し, 熱傷瘢痕9例, 褥瘡7例, 虚血肢3例, 悪性腫瘍1例, 外傷6例に対して地域病院で手術および周術期管理を行なった。術式変更となったものは遊離植皮術を予定していた熱傷瘢痕に対して局所皮弁術を施行した2例 (7.7%) であった。術後, 重篤な合併症を発生した症例はなく, また, 再手術を必要とした症例は外傷に対して縫合閉鎖した1例 (3.8%) のみであった。電子ネットワークを利用した大学病院と地域病院の診療連携により高齢者難治性皮膚潰瘍の診断・治療を地域病院で展開することが可能であった。