著者
野路 雅英 鷲見 真貴 大森 敬之 水野 まゆみ 鈴木 憲治郎 田代 田鶴子 喜谷 喜徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.675-683, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
30
被引用文献数
4

水に対する溶解度を増加させる目的で1,2-シクロヘキサンジアミン(dach)および2-(アミノメチル)シクロヘキシルアミン(amcha)を担体配位子とする一連の白金(IV)錯体を合成し,これらのマウス白血病L1210に対する制がん性試験を実施した。いずれの錯体も制がん活性であり,またdach自金(IV)錯体の方がamcha白金(IV)錯体よりも制がん効果が高く,かつ前者の錯体ではl-dachを担体配位子とする白金(IV)錯体が他の異性体白金(IV)錯体よりも高い制がん活性を示す傾向にあった。とくに,trans-PtCl2(oxalato)(l-dach),trans-PtCl2(malonato)(l-dach)およびtrans-PtCl2(oxaloto)(dl-trans-amcha)が高い制がん効果を示し,第二次制がん性試験を実施する資格を十分に備えているものと考えている。一般に,白金(IV)錯体は白金(II)錯体と比較して反応性が低いことから,白金(IV)錯体は生体内で白金(II)錯体に還元されてはじめてその制がん活性を発現するとも考えられているので,とくに光,およびアスコルビン酸による還元反応についてHPLCにより検討した。その結果,dach白金(IV)錯体は水溶液中で容易に白金(II)錯体に還元されることを見いだした。