著者
岡田 誠 才藤 栄一 水野 元実 藤野 宏紀 伊藤 三貴 西尾 美和子 余語 孝子 織田 幸男 林 正康
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.B0126-B0126, 2007

【目的】調整機能付き後方平板支柱型短下肢装具(APS-AFO)は、外観性・機能性・調整性という臨床の3つのニードを同時に満たした装具であり、モジュラーパーツである後方平板支柱(4剛性)、ヒンジジョイント(3タイプ)を適切に選択することにより、幅広い歩行能力に適応可能な装具である。今回、連続歩行による多数歩採取可能、定常速度設定可能という、トレッドミル歩行分析法の利点を生かした計測方法でAPS-AFOの歩行分析を行った結果、一般的な平地歩行分析では困難と思われる、再現性の検討やパターン分析が可能となったので報告する。<BR>【対象と方法】対象は、APS-AFOにて歩行が修正自立の脳卒中片麻痺者10例とした。方法は、トレッドミル上を約20秒間連続歩行した時の歩行を3次元動作解析装置(3D解析)で分析した。3D解析には、キッセイコムテック社製Kinema Tracerを使用した。APS-AFO、裸足の2歩行について同一歩行速度(裸足の快適歩行速度)で歩行分析を行い、それぞれの時間・距離因子の再現性、関節角度変位(特に、足部内反の角度変位)、進行方向の重心移動速度、連続歩行による歩行パターン分析を比較検討した。なお、本研究は藤田保健衛生大学倫理委員会において認証されており、データ計測の際には被験者より同意書を得て行った。<BR>【結果】トレッドミル上を連続歩行する多数歩計測によって、各因子の平均値、標準偏差、変動係数(ばらつきの指標)などの統計的手法が可能となった。APS-AFO、裸足の時間・距離因子、関節角度変位は、APS-AFOの方が、裸足よりもばらつきが少なく、運動の再現性が高い結果となった。また、関節角度変位は、APS-AFO、裸足の順に歩行時の関節コントロールが良好であった。特に、遊脚期の足部内反はAPS-AFO、従来型装具が著明に減少した。進行方向の重心移動速度では、APS-AFOの重心移動は両脚支持期でスムーズに行われており歩行効率の向上につながった。<BR>【考察】トレッドミル歩行分析法では、多数歩採取、定常速度設定という計測方法が可能なため、一般的な平地歩行による2~3歩による歩行分析では困難な統計的手法が可能となった。すなわち、1歩1歩にばらつきが生じやすい片麻痺者では、トレッドミル歩行で採取した約15歩分の平均値を算出することによってより信頼性の高い結果が得られ、また、変動係数を利用することによりそのばらつき程度の評価も可能となった。APS-AFOの効果判定おいても、トレッドミル歩行分析法による足部内反や重心移動速度などが有効であったと思われる。これらのことから、トレッドミル歩行分析法による歩行評価は、片麻痺者など障害を呈した症例の装具効果判定を行う際の新しい指標となると思われる。<BR><BR>
著者
伊藤 実和 才藤 栄一 岡田 誠 岩田 絵美 水野 元実 坂田 三貴 寺西 利生 林 正康
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, 2005-04-20

【目的】短下肢装具(AFO)は最も使用されている装具である.しかし,機能的には優れていても外観に欠点があったり,逆に外観が良好でも機能的に問題があったり,さらに患者の状態変化に対応しにくいなど,外観性,機能性,調整性を同時に満たすものは現存しない.我々は,この問題を解決すべく調節機能付き後方平板支柱型AFO(Adjustable Posterior Strut AFO:APS)の開発を進めている.APSは理論上,効果的な内外反(ねじれ)防止機能が期待できる.今回,健常人と片麻痺患者を対象に本装具と従来型AFOの歩行時の下腿・足部分の底背屈と内外反(ねじれ)を比較検討した.<BR>【方法】対象は健常人1名,左片麻痺患者2名とした.症例の歩行レベルは,両名ともT字杖を使用しShoehorn Brace(SHB)で修正自立であった.健常人では,評価用APSを用い,4種類のカーボン支柱(No1:硬ーNo4:軟)を使用した.APSの足関節角度条件は,背屈0度固定と背屈域0~35度遊動の2設定とした.比較する従来型AFOは可撓性の異なる3種類のSHBを使用した.片麻痺患者では,APSを個別に採型,作製した.カーボン支柱には症例に最も適した軟タイプ(No4)とした.足関節角度設定はそれぞれ背屈域5~35度遊動,背屈域5~30度遊動とした.比較には症例が従来から使用していたSHBを用いた.運動計測にはゴニオメーターと3次元動作解析装置を使用した.APSとSHBを装着してトレッドミル歩行を20秒間行ない,歩行中の足関節底背屈角度と下腿部のねじれ角度を計測した.<BR>【結果】健常人においては,APSの支柱が軟らかい程,SHBでは最狭部トリミングが小さい程,底背屈角度とねじれが大きくなった.両装具を比較すると,底背屈運動範囲は,大きい順にAPS背屈遊動,APS固定,SHBとなり,逆にねじれの大きさは,SHB,APS固定,APS背屈遊動の順となった.運動の軌跡をみるとAPSではSHBに比べ底背屈がスムーズで,踵接地後の底屈と立脚後期の十分な背屈が得られた.2症例の検討でも,SHBに比してAPSでより底背屈角度が大きく,ねじれが小さい傾向にあった.APSでは立脚後期に十分な背屈が得られ,立脚期に起こるねじれも緩やかであった.2例ともAPS歩行ではSHB歩行より歩行速度上昇,ストライド増加,ケイデンス減少が得られた.<BR>【考察】健常者と片麻痺患者の両者において,APS(固定,背屈遊動)では,SHBに比べ,踵接地後の足関節底屈や立脚後期の背屈など歩行時の底背屈がスムーズで,足関節の底背屈が十分に得られる際にもねじれは少ないという良好な機能性を示した.片麻痺患者では,この機能性が時間因子や距離因子にも影響を与えていたと考えられた.今後は症例数を追加し,APSの機能性を確認したい.