著者
小崎 完 水野 忠彦 大橋 弘士
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

申請書の研究計画・方法に従い、購入機器のセットを行い、あわせてそれらを一括制御するためのコンピュータプログラムを作成し、電解研磨中の電流あるいは電位変動の連続的な測定記録を可能するシステムの構築を行った。つぎに、このシステムを用いて、放射性腐食生成物を模擬した酸化皮膜を形成した304ステンレス鋼を燐酸溶液中で定電位電解研磨した際の電流変動の観察を行った。この場合、燐酸濃度は28vol%とし、ステンレス鋼はあらかじめ電気炉において600℃で一定時間酸化させたものを用いた。電解研磨の際に観察された電流変動スペクトルを、最大エントロピー法(MEM)によって解析した結果、0.01Hz〜10Hzの周波数範囲で、比較的再現性のある周波数スペクトルが認められた。特に、0.1Hz〜10Hzの周波数範囲においては、両対数グラフ上で直線関係を示し、その傾きが-1から-4となった。この傾きは電解研磨開始直後には比較的高い値を示すが、研磨が進行するにつれて徐々に-3以下の低い値に落ち着く傾向のあることを見い出した。それらの傾きと測定電流値の平均あるいは分散値との相関については今後の課題である。以上の観点から、電解研磨除染時の電流変動を観察しその周波数スペクトルの傾きに着目することにより、除染進行状態をモニターできる可能性が認められた。ただし、現段階においては、ステンレス鋼試料上の酸化皮膜の厚さ、撹拌、温度、電解液濃度などのパラメーターについて十分に把握していないので、今後これらについてのデータを精力的に収集するとともに、従来用いられてきた除染条件の再評価及び最適除染条件の提案を行う。