著者
中村 拓真 今井 啓輔 濱中 正嗣 山﨑 英一 山田 丈弘 水野 敏樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.100-104, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

61歳男性.声の聞こえにくさ,物の見えにくさ,ふらつきにて第6病日に受診した.両側聴力低下とともに,見当識障害,眼球運動障害,体幹失調,深部反射の消失がみられた.頭部MRIのFLAIR画像にて両下丘を含む中脳蓋と両視床内側に高信号域がありWernicke脳症(Wernicke encephalopathy; WE)が疑われた.ビタミンB1補充療法開始後に聴力は急速に回復し,眼球運動障害と歩行障害も徐々に改善した.入院時の血清ビタミンB1低値にてWEと診断され,第39病日の頭部MRIでは異常信号は消退していた.本例におけるビタミンB1補充後の聴力低下と下丘のMRI異常信号の改善経過からWEの聴力低下の可逆性が確認された.
著者
松浦 啓 蒔田 直輝 石井 亮太郎 藤田 泰子 古野 優一 水野 敏樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.378-382, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
25
被引用文献数
1

Chronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(CLIPPERS)の病変は一般的に後脳から離れるに従って縮小することが多いが,側頭葉に最大病変を示す症例を経験した.症例は49歳男性.来院22日前から発熱が,その後左眼視野障害が出現し入院となった.神経学的に左眼視野の中心部に暗点を認め,MRIで右側頭葉に粒状のガドリニウム造影効果を伴うFLAIR高信号病変を認めた.その後,橋及び小脳に病変が拡大し,複視・滑動性眼球運動障害・輻輳麻痺が出現した.右側頭葉病変から開頭脳生検し,CLIPPERSと診断した.ステロイド投与により病変・症状ともに軽快した.病初期に後脳から離れた病変が大きい症例であっても,CLIPPERSの可能性を考慮する必要がある.