著者
正高 佑志 池田 徳典 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001299, (Released:2019-06-27)
参考文献数
22

脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.

67 0 0 0 OA 頸椎症の診療

著者
安藤 哲朗
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.469-479, 2012 (Released:2012-07-27)
参考文献数
49
被引用文献数
8 5

頸椎症は50歳以上の人では高頻度であり,神経根症と脊髄症をおこす.放射線画像上の頸椎症性変化は無症候性のことも多いので,神経症候が頸椎症からおこっているのか,それとも他の神経疾患からおこっているのかを評価する必要がある.誤診を防ぐためには画像上の病変の高位と神経症候とを対比することが重要である.とくに頸椎症と筋萎縮性側索硬化症の鑑別診断は臨床上重要な問題である.頸椎症患者の経過や予後は様々なので,予測はかなり困難である.多くの患者は比較的良好な経過をとる.
著者
飯塚 高浩
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.774-778, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

Recently a new category of treatment-responsive encephalitis has been proposed associated with antibodies against neuronal cell membrane antigens, including VGKC, NMDA receptor (NMDAR) and AMPA receptor. Anti-NMDAR encephalitis is caused by the antibodies, which bind to extracellular conformal epitope in the NR1/NR2 heteromers of the NMDAR. The antibodies are usually detected in CSF/serum of young women with ovarian teratoma (OT), who typically developed schizophrenia-like psychiatric symptoms. Most patients developed seizures, followed by unresponsive/catatonic state, central hypoventilation, and bizarre orofacial-limb dyskinesias. Based on symptomatology and current NMDAR hypofunction hypothesis in schizophrenia, we speculated that the antibodies might cause inhibition of NMDAR in presynaptic GABAergic interneurons, causing a reduction of release of GABA. This results in disinhibition of postsynaptic glutamatergic transmission, excessive release of glutamate in the prefrontal/subcortical structures, and glutamate/dopamine dysregulation. Recent studies demonstrated that the antibodies cause reversible reduction in the numbers of cell-surface NMDAR and NMDAR clusters in postsynaptic dendrites, suggesting antibodies-mediated decreased function of NMDAR. Early tumor resection with immunotherapy is recommended in OT-positive cases but not in OT-negative cases. However, exploratory laparotomy may increase the chance to identify microscopic teratoma and improve the outcome if patients who were refractory to immunotherapy had anti-NMDAR antibodies and ovarian cyst.
著者
柴田 護
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.668-676, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
69

片頭痛の有病率は約10%と報告されている.片頭痛では,数時間持続する拍動性頭痛が悪心・嘔吐や光過敏を随伴して繰り返し起こる.個々の患者のQOLは大きく障害され,社会全体に与える経済的影響も非常に大きい.動物実験や機能画像を用いた臨床研究から,片頭痛は視床下部,大脳皮質,三叉神経系,自律神経系など非常に広範な部位の異常を呈する複雑な神経疾患であることが明らかとなった.従来の片頭痛発作予防治療では,カルシウム拮抗薬や抗てんかん薬などが経験に基づいて用いられてきた.しかし,カルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin gene-related peptide; CGRP)が片頭痛病態に深く関与することが明らかとなり,CGRP関連抗体による特異的治療が脚光を浴びている.
著者
金塚 陽一 稲岡 万喜子 中澤 謙介 浅野 史織 森 泉 山口 滋紀
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.795-798, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

37歳男性.頭痛でブロムワレリル尿素(Bromvalerylurea,以下BUと略記)を最大2,400 mg/日,11年間内服継続し歩行困難で入院した.皮疹,るいそう,認知機能,知能,注意機能低下,筋力低下,下肢振動覚低下あり.頭部MRIでびまん性脳萎縮,末梢神経伝導検査で神経伝導速度,活動電位低下を呈した.血中BU検出,ブロム高値で慢性BU中毒と診断した.BU服薬中止,補液で神経症状,皮疹は軽快し,末梢神経伝導検査所見も改善した.慢性BU中毒の末梢神経障害例の既報告は少なく,今回既報告例を交え報告する.
著者
岩上 貴幸 山田 創 小笠原 禎文 孫 宰賢
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.184-189, 2022 (Released:2022-03-29)
参考文献数
18

症例は生来健康な全く既往のない31歳男性.コロナウィルス修飾ウリジンRNAワクチン(トジナメラン)接種翌日より頭痛および繰り返す嘔吐を認めた.接種4日後には左半身の痺れも自覚し,当院救急外来受診.MRIで脳静脈洞血栓症と診断し,抗凝固療法を開始した.治療開始後症状は徐々に改善を認め,フォローアップのMRIでは閉塞静脈洞の大部分で再開通を認めた.採血上明らかな血栓性素因はなく,コロナウィルスの感染も否定的であった.ワクチン接種24時間以内に発症した脳静脈洞血栓症の1例を経験したが,両者の因果関係については今後より大規模な症例の蓄積から判断を行う必要がある.
著者
飯塚 高浩
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.491-501, 2019 (Released:2019-08-29)
参考文献数
68
被引用文献数
4

一連の抗神経細胞表面抗原抗体の発見により,脳炎自体の疾患概念も10年で大きく変化し,「自己免疫性脳炎(autoimmune encephalitis; AE)の診断に対する臨床的アプローチ」が提唱された.現在では,脳炎・脱髄重複症候群,てんかん,精神症状,異常運動,単純ヘルペス後脳炎,stiff-person症候群あるいは睡眠行動異常症の一部にもこれらの抗体が関与していることが示され,疾患の既成概念や画像所見にとらわれることなく,早期診断・早期治療することが求められる時代になった.AEの診断・治療上,本邦においては解決すべき課題は沢山あるが,本稿では,橋本脳症や新規発症難治性てんかん重積も含め,実臨床に関連のある話題に焦点を絞って述べる.
著者
河野 浩之 橋本 洋一郎 平野 照之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.594-601, 2021 (Released:2021-09-28)
参考文献数
34
被引用文献数
1 4

新型コロナウイルスに対するアデノウイルスベクターワクチンであるバキスゼブリア®(アストラゼネカ社)の副反応として,血小板減少症を伴う血栓症(特に脳静脈血栓症)が報告されるようになり,欧州医薬品庁は「非常にまれな副反応」として記載すべき病態と結論づけている.ヘパリン起因性血小板減少症と類似した病態といわれている.頻度は少ないものの,本病態が疑われる場合は,ヘパリン投与や血小板輸血を避け,高用量免疫グロブリン静注療法やヘパリン以外の抗凝固薬投与など,関連知見に基づいた最善と思われる治療を速やかに提供すべきである.本病態は新しい概念でありエビデンスは確立していないが,現状で報告されている内容をまとめた.
著者
伊藤 大輔 安井 敬三 長谷川 康博 中道 一生 勝野 雅央 髙橋 昭
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.481-485, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
24
被引用文献数
1 2

症例は65歳の女性である.再発性の小リンパ球性リンパ腫に対し,半年間rituximab等が投与され,めまいと小脳性運動失調が発症した.頭部MRIで両側中小脳脚病変を認め,進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy; PML)を疑い,髄液中JC virus(JCV)-DNA PCR検査を数回施行し,4回目に初めてJCV-DNAが検出され,診断が確定した.小脳萎縮を認め,granule cell neuronopathyの合併が示唆された.Mirtazapineとmefloquineの併用治療により長期生存が得られた.PMLでは両側中小脳脚の病変で発症する例がある.また,病初期には髄液検査でJCV-DNAが陰性のことがあり,繰り返し検査する必要がある.
著者
久留 聡
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.109-114, 2021 (Released:2021-02-23)
参考文献数
39
被引用文献数
1

スモン(subacute myelo-optico-neuropathy)は,1960年代に多発した中毒性神経疾患である.腹部症状が先行し,下肢末端から上行する異常知覚・感覚障害,痙性麻痺,視力障害をきたす.当初は原因として感染が疑われたが,緑尿分析からキノホルム説が浮上し,疫学調査・動物実験により確認された.日本最大の薬害となった背景には,外用薬の内服薬への転用,安全神話,杜撰な投与量規制,国民皆保険制度による投与量増加,腹部症状の複雑性など多くの要因が存する.現在も恒久対策として患者検診が継続して実施されている.今後はキノホルム神経毒性機序や感受性の研究,薬害スモンの風化防止が重要である.
著者
井関 真理 中山 博輝 渡邊 睦房 内堀 歩 千葉 厚郎 水谷 真之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.558-562, 2022 (Released:2022-07-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1

症例は43歳女性.コミナティ‍®(BNT162b2,ファイザー社)接種後に異常感覚と筋力低下,嚥下障害,高度の深部感覚障害を自覚し,当科を受診した.腱反射は消失,髄液検査は正常,抗ガングリオシド抗体は陰性で,神経伝導速度検査ではF波の出現率の低下を認めた.ワクチン接種による自己免疫性の末梢神経障害と考え血漿交換を行ったところ,症状は改善したが深部感覚障害は残存した.新型コロナウイルス感染(coronavirus disease 2019,以下COVID-19と略記)後およびCOVID-19ワクチン接種後に末梢神経障害を生じた既報例を本例と比較すると,深部感覚障害がめだつ点が特徴的だった.
著者
関 守信 栗原 可南子 今野 卓哉 藤岡 伸助 坪井 義夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.763-772, 2022 (Released:2022-10-22)
参考文献数
76

パーキンソン病(Parkinson’s disease,以下PDと略記)患者の痛みは代表的な非運動症状である.痛みは病期を問わずPD患者を悩ます症状の上位に位置付けられており,他の症状や生活の質に影響を及ぼす一方で,適切に評価,治療されていないことも多い.PD患者が訴える痛みは,PDの疾患と関連する痛みと関連しない痛みがあり,また,原因となる障害部位に応じて中枢性と末梢性に分けられるなど非常に多彩である.痛みの診療の際にはKing’s PD pain scaleなどのPD特異的な評価尺度を用いて痛みの種類や程度を評価し,病態に応じてエビデンスに基づいた治療方法を検討することが重要である.
著者
藤岡 祐介 安井 敬三 長谷川 康博 高橋 昭 祖父江 元
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.634-640, 2009 (Released:2009-12-07)
参考文献数
27
被引用文献数
9 8

意識障害と痙攣で発症した重症熱中症の47歳,男性症例.意識障害の改善後,高度の無為・無欲,体幹失調等の小脳性運動失調症候がみられた.急性期の頭部MRI拡散強調像(DWI)にて小脳皮質に,ADC値の低下をともなう異常高信号がみられた.発症約2カ月後,体幹失調,構音障害は改善したが,四肢の測定障害はむしろ悪化した.MRI(DWI)上の異常高信号は消失したが,小脳は萎縮傾向を示し,脳血流シンチグラフィでは小脳歯状核部の血流低下が増強した.DWIでの異常高信号は,高体温による小脳Purkinje細胞の細胞性浮腫を捉えた可能性があり,その後の小脳萎縮の出現や後遺症の有無について注意深く検討する必要があることを示している. 本症例では急性期に酒石酸プロチレリンを使用し,無為・無欲に対する有効性を確認した.熱中症後の無為・無欲の改善を期待し試みられるべき治療の一つであると考える.
著者
荒井 元美
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000716, (Released:2015-07-07)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

1995年4月からの約20年間に起立性頭痛で受診した連続86例の記録を再検討し,特発性低髄液圧症候群(spontaneous intracranial hypotension; SIH)が疑われた56例の症例集積研究を行った.性差,好発年齢,随伴症状はSIH症例での報告と一致した.激しい起立性頭痛のある患者群ではMRIの硬膜造影所見がより軽度で,髄液漏出に対する代償機転の障害が疑われる.髄液漏出部位を特定できず腰部で硬膜外自家血注入(epidural blood patch; EBP)を行った患者群と漏出部位近傍でのEBP治療群とで効果に有意差はなかった.発症から起立性頭痛が消失するまでの日数と発症から受診までの日数との回帰係数は1.243,切片は14.8日であり,受診,診断が早い分だけ回復が早い傾向があった.
著者
湯浅 直樹 石川 達也 徳岡 健太郎 北川 泰久 高木 繁治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.422-425, 2008 (Released:2008-06-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は17歳男性である.1歳1カ月の頃左上下肢麻痺が出現し,某大学病院へ搬送され原因不明の急性小児片麻痺と診断された.麻痺は約2週間で改善し,原因不明のまま以後再発なく経過していた.17歳になり頭部外傷で当院へ搬送された.頭部CT施行したところ,右放線冠~基底核にかけて陳旧性脳梗塞をみとめたため精査をおこなった.その結果,メチレンテトラヒドロ還元酵素(MTHFR)欠損(V/V型)による高ホモシステイン血症と診断された.MTHFR欠損は先天性アミノ酸代謝異常の新生児マススクリーニングで検出されないため,診断が遅れることがあり注意を要する.
著者
阿部 康二
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001095, (Released:2018-02-28)
参考文献数
265
被引用文献数
2

日本における進んだamyotrophic lateral sclerosis(ALS)研究の今後のさらなる発展を期するために,日本において初期にALS関連疾患がどのように見出され,その原因や病態がどのように解明され展開して来たかについて今日的視点で纏めておくことは重要である.本稿では認知症を伴うALSや,紀伊半島を中心とした地域で見られるALS/PDC,遺伝性ALS(FALS),球脊髄性筋萎縮症(SBMA),小脳性運動失調など多系統に及ぶALSの5項目に焦点を当てて,それらの初期論文とその今日的展開について海外論文とも比較検証しつつ主要論文を中心に論じた.5項目ともに日本からの論文が極めて重要な貢献を果たし,初期から120年以上に渡って大きな今日的展開を継続していることを示した.
著者
正高 佑志 池田 徳典 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.405-411, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
22

脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.
著者
柴田 和久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1185-1187, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Neurofeedback is defined as a method to read out information from the brain and feed the information back to the brain. This technology has developed in the past ten years and attracted considerable attention as potential treatments for rehabilitation and psychiatric disease. We recently invented the decoded neurofeedback (DecNef) method, a new neurofeedback technique using functional magnetic resonance imaging. With DecNef, subjects were trained to regulate their brain activation pattern in a specific area and lead the pattern to a target state. We found that the DecNef training for several days leads to perceptual improvement that corresponds to the induced target state. DecNef enables us to test cause-and-effect relationships between neural activation in a target brain area and changes in perception, cognition, and behavior. In this sense, this method can be a powerful tool in cognitive and systems neuroscience. In addition, the concept of DecNef, leading a neural activation pattern to a specific state, can be applied for a variety of fields including engineering and medical treatment.
著者
辻 佑木生 中山 貴博 坊野 恵子 北村 美月 今福 一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.423-428, 2014-05-01 (Released:2014-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

症例1は35歳男性である.6ヵ月前より禿頭予防にフィナステリド1 mg/日を内服していた.頭痛と痙攣発作を発症し,右前頭葉に出血をともなう低吸収域をみとめ,CT venography(CTV)で脳静脈洞血栓症と診断した.症例2は41歳男性である.2年前より禿頭のためフィナステリド1 mg/日,ミノキシジル6 mg/日を内服していた.頭痛を発症し,左頭頂側頭葉に散在する脳梗塞をみとめた.フィナステリド服用中の血栓症発症は,医薬品医療機器総合機構(The Japan Pharmaceutical and Medical Devices Agency; PMDA)へは,当院例を併せて14症例報告があり,脳卒中4例,心筋梗塞6例,その他4例であった.フィナステリドによるエストロゲン上昇の報告があり,血栓症発症への関与が考えられた.
著者
高草木 薫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.325-334, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
26
被引用文献数
17 9

大脳皮質は認知的な随意運動の発現に,脳幹―脊髄は姿勢反射や筋緊張,歩行などの生得的な運動に,そして,大脳皮質から脳幹への皮質網様体投射は随意運動に先行する姿勢制御に関与する.大脳基底核は強力な抑制作用と脱抑制によって,大脳皮質と脳幹の時間的・空間的な活動動態を協調的に制御し,適切な運動機能の発現に寄与する.したがって,大脳基底核の障害やこれを修飾するドーパミン作動系の異常により,この協調的な調節機構が破綻すると,随意運動や姿勢筋緊張,そして,歩行の異常など,基底核疾患に特有の運動障害が出現する.