著者
水野 潤二 椹木 勇 江藤 勝磨 日下 尚機 江原 収
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.286-298, 1972

1953年Morrisによって指摘された精巣性女性化症候群testicular feminization syndromeのcomplete formでseminomaを伴ったまれな1例を経験した. すなわち43才の主婦で下腹部腫瘤感を主訴として来院し, 本症と診断, 開腹により右側性腺は新生児頭大の未分化胚細胞腫(20×10×10cm, 840g)であり, 左側は, 胡桃大の睾丸(精子形成像はなく, Leydig細胞増生)と栂指頭大の嚢胞(輸精管)を認め, これらを摘出した. 両親はいとこ結婚と言われ, 8人の同胞のうち男女各1人は幼時死亡, 他の5人はいずれも女性で, 結婚しているが, 長姉および患者は児を得ていない. 術後尿中17KSは著減し, 腟スメアの各係数にはかなりのエストロゲン効果がみられるなど, 順調に経過している.