著者
永井 崇寛
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

原子核バートン分布関数の最適化研究を行った。原子核構造関数F_2とDrell-Yan断面積比のデータを使用し、LoとNLOの解析と行うことにより最適な分布関数とを決定し、それぞれの分布関数の不定性を示した。この解析で、各々の分布関数に対して以下の結果を得た。・価クォークの原子核補正は、大きいXで構造関数はほぼ価クォーク分布で表せるため、大きいX領域のF_2のデータより精度良く決定できた。さらに、小さいXにおいても価クォーク分布は精度良く決定できていることがわかった。・反クォークの原子核補正は、逆に、小さいXで構造関数はほぼ反クォークで表せるため、小さいX領域のF_2のデータより精度良く決定できていることがわかった。さらに、大きいXでは大きい不定性を持っていることがわかった。・グルーオンの原子核補正は、全X領域で正確に決まってないことがわかった。グルーオン分布は摂動の高次項として、構造関数や断面積に直接寄与するため、NLOの解析でより正確に求まることが期待される。しかし、現状では原子核構造関数の比に対して、正確なO^2依存性を示データが測定されておらず、グルーオン分布の原子核補正を求めることができなかった。原子核のグルーオン分布を正確に決定するためには、より広範な運動学的領域のデータが必要であり、さらに、原子核・原子核衝突の直接光子生成反応等の正確なデータが必要であることを指摘した。・重陽子の原子核補正についても詳しく検討し、現状では核子の分布自体に重陽子の原子核補正効果が含まれている可能性を指摘した。