著者
永井 康宏 小玉 耕平
出版者
島根大学
雑誌
島根大学論集 教育学関係 (ISSN:04886526)
巻号頁・発行日
no.16, pp.91-113, 1966-12

体育とは身体運動やスポーツの実践によって成立する教育作用を意味し,一般には運動やスポーツによる人間生成あるいは人間形成といわれている。したがって,単なる運動やスポーツの実践が直ちに体育であるのではないけれども,運動やスポーツが行なわれないところに体育は成立しないから,運動やスポーツの実践は体育成立の基本条件と考えてよい。そこに体育成立の手がかりがあると考えられる。13; このような運動やスポーツ実践の機会は,学校,家庭,地域杜会などにあるが,学校においては全員必修の教科体育時,他に教科外の特別教育活動や学校行事活動の機会,さらには自由時などがあり,適切な指導とあいまって,そこにそれぞれ体育が成立することが期待されている。13; しかし,最近の受験体制と進学競争の激化に伴って,学校における運動やスボーツの実施がしだいに減少の傾向にあることが指摘されている。例えば,昼休み時間や放課後学校で運動する生徒が減少したとか,対外試合が華やかにジャーナリズムによって喧伝されているにもかかわらず,運動部(クラブ)員の数はしだいに減少しつつあるとかいわれているのがそれである。13; そのような状況が存在することは確かであるし,また,受験体制がそのような事態の最も根本的な原因になっていることも否定できないだろう。しかし,運動やスポーツの実施がどの程度に減少したか,また,それがどのような理由にょるかを具体的に検討することもしないで,すべて,原因や理由を受験体制だけに帰することは非科学的であろう。現状の把握やその原因や理由の追究は困難ではあるが,そうかといって,何もしないで,拱手傍観しているというのでは,あまりに無責任であり,また,ふがいないと.思われる。13; 本研究は、このような動機や観点から,二県の中学生高校生の最近の運動生活の実態や運動に対する感じ方,考え方を調査し,事態の真相を究明し,それから彼等の体育についての意識や,意識の形成に影響を及ほしている要因について考察し,今後の学校体育の経営や指導のための手がかりを求めようとしたものである。