著者
永塚 鎮男 漆原 和子
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.170-178, 1989-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
8

海南島は,亜熱帯から熱帯への移行帯に位置しているとともに,降水量の多い東部から乾燥した西部へ向かって湿潤度が次第に低下しているため,成帯性土壌の分布様式もかなり複雑である。この島の成帯性土壌型の国際的土壌分類体系における位置づけを明らかにするために,代表的な土壌型であるラトソル(傳紅壌),ラテライト性赤色土(赤紅壌),鉄質ラトソル(鉄質傳紅壌)の3種の土壌断面について一般理化学性,粘土鉱物組成,鉄化合物の存在様式を分析し,アメリカの分類体系, FAO-Unescoの分類体系ならびにフランスの生態的土壌分類体系における分類単位との対比を試みた。対比の結果は以下のとおりである。 1) 5ケ月間の乾季がある亜熱帯ないし熱帯季節雨林気候下のラトソルはオキシックロドアスタルフ(USA), クロミックリキシソル (FAO-Unesco), 典型的熱帯鉄質土(フランス)にそれぞれ対比される。 2) 乾季が4ケ月間ある亜熱帯季節雨林気候下のラテライト性赤色土は,オキシックハプラスタルト (USA), ハプリックアリソル (FAO-Unesco), 塩基未飽和熱帯鉄質土(フランス)にそれぞれ対比される。 3) 亜熱帯ないし熱帯雨林気候下の鉄質ラトソルは,トロペプティックハプロルソックス (USA), ローディーックフェラルソル (FAO-Unesco), フェリソル(フランス)にそれぞれ対比される。したがって,海南島のいわゆるラトソルやラテライト性赤色土は真のラトソル(オキシソルあるいはフェラルソル)のカテゴリーには入らず,鉄質ラトソルだけがかろうじて真のラトソルに属すものと見なされる。
著者
漆原 和子 永塚 鎮男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
Geographical review of Japan, Series B (ISSN:02896001)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.127-136, 1989-12-31 (Released:2008-12-25)
参考文献数
14

雲南省の西双版納には成帯性土壌が垂直的に分布している。すなわち標高600mまでは準ラトソル(準磚紅壌), 600mから900mまでは赤紅壌, 900mから1600mまでは赤色土(紅壌),1600m以高には黄褐色森林土(黄棕壌)と思われる土壌が分布する。しかし,赤紅壌は紅壌の分布地域に古土壌として分布している。鉄の結晶化指数(Fed-Feo)/Fetはそれぞれの土壌の化学分析値から計算した。準磚紅壌の結晶化指数はほとんどが0.85以上の値を示し,赤紅壌は0.7~0.85, 紅壌は0.5から0.7の値を示す。 吉良の暖かさの指数による区分では,西双版納の標高900mまでは亜熱帯,それより高地は温暖帯である。一方,日本では赤色土の分布は西南日本の亜熱帯地域で,黄褐色森林土は西南日本の温暖帯に広く分布し,かつ古土壌として赤色土を伴なう。このように西南日本と中国南部の雲南では,土壌型と暖かさの指数の間の関係は同じではない。しかしながら雲南の紅壌と西南日本の赤色土とは鉄の結晶化指数はほとんど同じ巾 (0.5から0.7) の中におさまる。 標高600mよりも低い雲南省の南部は吉良の暖かさの指数では亜熱帯であるが,準磚紅壌が西双版納にある。この地方では1月から6月までの間,毎年水不足量 (d) が出現する。雲南省から広東省にかけて,水不足量は毎年1月から6月までは出現しない。むしろ水不足量は中国南部のより東部では8月, 9月に年々出現する。雲南省の南部は夏に高温湿潤であり,有機物の分解には好適である。一方,冬から春にかけて毎年温暖で,かつ乾燥している。このような気候条件は鉄の結晶化を促進させ,結果的に亜熱帯のような温度条件であっても準傳紅壌や赤紅壌を分布させていると考える。ただし,準傳紅壌はこの調査地域では古土壌として分布している可能性がある。