著者
永島 育
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

多宗教・多民族帝国であったオスマン帝国は、19世紀から20世紀にかけて発生した叛乱や紛争の末に、陸軍による治安維持、さらには強制移住や虐殺など、民衆への暴力を伴いながら崩壊した。東欧・中東を支配したオスマン帝国が、暴力的に清算された過程を明らかにすることは、テロや紛争等の暴力という課題を抱える現代の東欧・中東を理解する上で、欠かせない問いである。本研究は、治安維持のための軍事作戦時、民衆への暴力の主体となったオスマン陸軍将兵の体験、そして暴力体験の報道等における再定義を分析する。これにより本研究は、陸軍将校はなぜ過剰なまでの暴力でオスマン帝国の清算を実行したのかという点を明らかにする。