著者
永村 和照 池条 清隆
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は,曲げ強度,歯面強度の伝達負荷能力がインボリュート歯車よりも優れた歯車を得ることを目的として,インボリュート・サイクロイド合成歯形,修正サイクロイド歯形といった特殊歯形はすば歯車を開発・設計し,その強度・性能を計算や実験の両面から検討を行い,つぎに示すような新たな知見等の成果を得た。1.本研究で設計・製作したホブにより特殊歯形はすば歯車の製作が可能となった。ホブの精度はJIS1級,それを用いて歯切りした試験歯車はJIS4級程度であった。 2.本研究のような特殊な歯形形状をもつはすば歯車においても成形方式の歯面研削によってJIS1級の歯形精度が得られ,歯形誤差が小さくなることによって歯車の振動性能が向上することがわかった。 3.設計された歯車の中心距離において,特殊歯形はすば歯車はインポリュートはすば歯車よりも優れた振動性能を有する。 4.特殊歯形はすば歯車は中心距離が設計値からずれた場合にかみあい状態が変化し,振動性能が変化する。特に,インボリュート・サイクロイド合成歯形はすば歯車では,中心距離が設計値よりも100μm以上狭くなると振動性能が低下する傾向があるが,その性能低下は十分に小さいものであり,はすば歯車によることによって振動性能が向上することが確認された。 5.インボリュート・サイクロイド合成歯形,修正サイクロイド歯形の2種類の特殊歯形はすば歯車のピッチング耐久限度はインボリュートはすば歯車よりも高いことが確認できた。このことから,これらの特殊歯形はすば歯車はインボリュートはすば歯車よりも歯面強度の優れた歯車であることが証明された。以上により,本研究で開発・設計した特殊歯形はすば歯車の振動性能,強度の優位性が確認され,実用に十分供することが可能と判断できる成果が得られたことを報告する。