著者
永海 秋三
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学理科紀要 第ニ類 生物学・地学 (ISSN:05135613)
巻号頁・発行日
no.2, pp.50-58, 1953-03

1)イソギクChrysanthemum pacificum NAKAI (2n=90)について,生育地の実地調査をおこない,その地理分布上の特質を生態遺伝学的に研究しようとした。2)イソギクは分布区域を,銚子-鳥島-佐倉をむすぶ地域(北緯30°28'-35°48',東経139°09'-140°50')にもつ海岸性の本邦固有種である。イソギクの種集団は,銚子・房総・三浦・伊豆・興津・用宗・御前崎・伊豆諸島の8小集団に分けらる。この小集団間の地域には本種は分布していない。したがつてこの種集団には地理的隔離の現象がみられる。3)イソギクの植生を生態および形態的見地から分けると,海岸型・海浜型・平地型・山地型の4となり,海岸型のものが主であること,および海蝕崖では他種に対し優占的であることが明らかになつた。4)房総・伊豆両半島の個々の地点における植生量測定の結果は第3,4図に示すごとくである。イソギク生育地の全長は約471,755m,巾は約3m,その植物休の草丈は約0.5mであるから,本種の地上部の全植生量は3者の相乘積7076,325m^3となる。5)本種の分布の中心は三浦・房総両半島の南部地域と推定される。