- 著者
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竹田 誠
永田 典代
福原 秀雄
- 出版者
- 国立感染症研究所
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2018-04-01
肺炎や下気道炎を起こすウイルスは多様である。しかしながら、これら呼吸器ウイルスは、ウイルス種としては多様であるものの、それら呼吸器ウイルスの膜融合蛋白が宿主気道上皮のプロテアーゼで活性化するという共通の性質を持つと考えられる。申請者らは「プロテアーゼ依存性トロピズム」理論に立脚した考えのもとに、ウイルス活性化に関する研究を推進してきた。その結果、ノックアウトマウス技術を用いることで、呼吸器上皮細胞に発現しているセリンプロテアーゼTMPRSS2が、インフルエンザウイルスの生体内活性化酵素であることを証明した。本研究では、TMPRSS2の生理機能や細胞内動態の解析、TMPRSS2の阻害化合物の大規模スクリーニングを実施し、TMPRSS2阻害化合物の呼吸器ウイルス感染阻害効果を検証することを目的に実験を行なっている。また、MERSコロナウイルス受容体(CD26)導入遺伝子改変マウスならびにTMPRSS2 KOマウスを用いて、MERSコロナウイルスのin vivo増殖、病原性発現におけるTMPRSS2の役割を解明するとともに、TMPRSS2の阻害化合物による各種呼吸器ウイルスやMERSコロナウイルスの生体内での増殖抑制効果を明らかにすることを目的に実験を行った。本研究開始以前に、MERSコロナウイルス受容体(CD26)導入遺伝子改変マウス(CD26-tgマウス)を作出することによって、すでにMERSコロナウイルスのin vivo(マウス)モデルを確立していたので、本マウスとTMPRSS2 KOマウスを交配されることによって作出されるマウス(CD26-tg/TMPRSS2 KOマウス)を用いて、MERSコロナウイルスのin vivo増殖におけるTMPRSS2の役割を解析した。の結果、TMPRSS2がMERSコロナウイルスの気道での増殖ならびに気道で起こる免疫反応に重要な意義があることが確認された。