著者
前中 省吾 森下 慈也 永田 大地 玉井 森彦 安本 慶一 福倉 寿信 佐藤 啓太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.629-642, 2016-02-15

本論文では,参加型センシングに基づき,多数の車両が車載スマートフォンを用いて,桜の花が咲いている場所の情報および動画を自動的に収集,配信するシステム,桜センサを提案する.桜センサでは,(1)桜の花の有無と量(桜度合い)を正確に認識すること,(2)複数車両が分担してセンシングすることで,負荷に偏りの生じないセンシングを実現すること,という2つの技術的課題を解決することを目標としている.(1)を解決するため,事前に作成した桜の花に出現する色の分布を用いて入力画像における桜度合いを算出する方法と,桜の花に似た色の人工物の誤検出を防ぐフラクタル次元解析に基づく方法を提案する.(2)を解決するため,各PoI(桜の花が見られる地点)の発見率をあまり低下させることなく車両1台あたりの処理負担を軽減する多段階センシング法を提案する.これは,すでに発見されたPoI近辺に新たなPoIが存在すると仮定し,既登録PoIの付近におけるセンシング(画像の撮影と解析)間隔を動的に短くする方法である.桜センサをiOSデバイスとサーバからなるシステムとして実装し,桜が開花中の道路を走行する実験を行った.7カ所で収集した合計1860秒の動画を10秒ごとに区切った動画186個に桜センサを適用した結果,桜のあり・なしを適合率0.91,再現率0.53で認識できた.また,シミュレーション実験により,多段階センシング法は,固定距離間隔でセンシングを行う手法と比較し,約半分のセンシング回数で同程度のPoI発見率を達成した.In this paper, we propose SakuraSensor, a system which senses and shares the information of roads with flowering cherries by leveraging car-mounted smart-phones. SakuraSensor aims to solve two technical challenges: (1) how to accurately detect flowering cherries and its degree, and (2) how to efficiently find locations of flowering cherries (PoIs) through cooperation among participants. For (1), we develop a color analysis-based method to detect image pixels belonging to flowering cherries. To exclude artificial objects with similar color, we also employ fractal dimension analysis. For (2), we propose the k-stage sensing method which dynamically narrows sensing interval near the PoIs already found, assuming that PoIs exist close together. We implemented SakuraSensor for for iOS devices with a cloud server, and traveled cherry-lined roads and recorded a total of 1,860 seconds video (divided into 186 ten-second videos for classification) in 7 different places. As a result, SakuraSensor classified the 186 videos into two classes (with or without flowering cherries) at about 0.91 of precision and 0.53 of recall. In addition, our k-stage sensing method achieved the comparable PoI discovery rate with half sensing times compared to a conventional method.
著者
玉井森彦 永田大地 前中省吾 森下慈也 安本慶一 福倉寿信 佐藤啓太
雑誌
研究報告コンシューマ・デバイス&システム(CDS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.15, pp.1-8, 2014-08-20

近年,景観の良さを評価指標とするナビゲーションサービスが提供され始めている.しかし,既存のサービスでは,景観の情報を人手により編纂しているため,あらかじめ決められた特定の時間帯や季節における静的な情報を提供するに留まっており,最新の状況を反映した情報提供が行われていない.また提供される情報もテキストや画像を中心としたものであり,経路選択の判断材料として不十分である.著者らは,参加型センシングに基づき,多数の車両が車載スマートフォンを用いて走行中の経路の動画を撮影し,景観の良い場所の動画を自動的に収集,配信するシステムの研究開発を行なってきた.これにより,広範囲にわたって動画付きの景観情報を様々な時間帯や季節のもとで自動的に収集可能となり,各ユーザのコンテキストを考慮した上で鮮度の高い景観情報を提供可能となる.本稿では,景観の良い場所として桜が見られる経路に着目し,スマートフォンにより撮影された動画から桜の写っている度合い (桜度合い) を数値化する手法を提案する.提案手法では,桜の花びらに出現する色の分布を表すヒストグラムを事前に作成しておき,そのヒストグラムを用いて入力画像における桜度合いを算出する.また,桜の花びらに近い色を持つ建物などが誤検出されることを防ぐため,フラクタル次元解析に基づきフレーム中で木の葉が茂っている場所のような複雑なエッジを持つ領域を特定した後,その領域に対してのみヒストグラムに基づく色解析を行う手法を考案した.提案手法による桜度合い算出結果の妥当性を検証するため,車両走行中に撮影された動画から桜の写っている部分,または写っていない部分の 1 秒間の動画を約 5000 個切出し,各々に対し目視で桜の有りなしを分類したものを正解データとして,提案手法に基づく分類精度を調べた.結果,提案手法は適合率が約 0.87,再現率が約 0.91 で桜の有りなしを分類できることが分かった.