著者
永田 謙二
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.221-236, 2017
被引用文献数
1

<p>&emsp;紛争後国であるアフガニスタンでは,2002年から国際社会による復興支援が開始された.現在は国家開発戦略の実現のために「政府のオーナーシップ」を重視したカブール・プロセスが実施されているが,復興と再建が成功しているとは言い難い.本研究は,水資源セクターから,カブール・プロセスの過程と成果について社会階層別に問題と課題を分析した.その結果,1)政治レベルでは復興支援における「政府のオーナーシップ」原則が不明確であった,2)政策策定レベルでは水資源セクターを分散化して調整機関を二重化した,3)政策実施レベルでは総合的な水資源政策が作成できず政策調整が行われなかった,4)現地社会レベルでは国民によるニーズの意思表示機会が無かった,などの問題を明らかにした.部族主義を基本とする自主独立性の強いアフガニスタンの地域社会では,「国民のオーナーシップ」がより重要である.政府は,地域社会のニーズを政策に反映する必要があり,そのための地方の組織・制度整備と人財育成が必要である.「国民と政府のオーナーシップ」を尊重し促進していくために,ドナーはその基本方針を明確にし,そのための能力向上を図る必要がある.</p>