著者
松下 孝太 中村 裕樹 竹内 明禅 永留 篤男 八反丸 健二
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.93, 2016 (Released:2016-11-22)

【目的】 投球動作において、late cocking(LCK)~acceleration(ACL)に投球時痛が多く、さらにmaximum external rotation(MER)となる時期でストレスが増大すると報告されている。MERは、肩甲骨、胸椎、胸郭など肩複合体として機能する必要性があり、それらの動きを意識して普段のケアを行うことが重要と感じている。今後、「肩甲骨、胸椎、胸郭の投球動作への関連」という医学的観点から選手に指導を行い、ケア意識の向上とMERにおける機能改善を図りたいと考えている。そこで今回、現場での投球時痛の割合とケア意識の実態を把握するための基礎調査を研究目的とした。【方法】 対象は2016年2月時点で某大学野球部に所属していた49名(投手16名、内野手22名、外野手11名、平均年齢19.5±1.5歳)とし、アンケート調査を行った。今回は、49名中有効回答が得られた47名ついて検討した。内容は、調査時の肩・肘痛の有無、投球時痛の生じる時期、重要だと思う時期と気を付けている点(複数回答)、LCK~ACLにおいて重要だと思う部位、普段のケアの重要度とした。【結果】1)投球時痛の有無 18名(38%) 肩10名、肘5名、肩・肘3名2) 投球時痛の生じる時期 LCK~ACL:8名(44%)、LCK:5名(28%) ACL:3名(17%) follow through:2名(11%)3) 重要だと思う時期と気を付けている点 ① LCK~ACL:18名(38%) 肘下がり8名(44%)、体の開き8名(44%)、力み2名(11%) ② early cocking~LCK:13名(27%) 体の開き7名(54%)、壁を作る5名(38%)、テイクバック1名(8%) ③ wind up:11名(23%:全て投手) 軸7名(64%)、重心の位置3名(27%)、力み1名(9%) ④ その他・特になし: 5名(10%)4) LCK~ACLにおいて重要だと思う部位 特になし・分からない:34名(72%)、股:6名(13%)、肩:5人(11%)、肩甲骨:2名(4%)5) ケアの重要度 重要と感じ行っている:24名(51%)、重要だが時間がない:9名(19%)、重要だが面倒くさい:9名(19%)、重要でない:4名(9%)、重要だが、方法が分からない:1名(2%)【考察】 全体の約4割の選手が投球時痛を有していた。うち9割がLCK~ACLの痛みであり、疼痛を有する選手の約6割が「体の開き」や「肘下がり」等、動作面で気を付けていた。しかし、「体の開き」や「肘下がり」にならないようにするためには「どう動かすか」という意識する選手は少なく、LCK~ACLにおいて胸椎や胸郭を意識する選手はいなかった。また、ケアの重要性を感じていても時間がない、面倒くさい、方法が分からない選手が約4割いた。投球動作においては一連のスムーズな並進運動と回転運動が重要であるが、今後「LCK~ACLにおける肩甲骨、胸椎、胸郭の関連」に着眼点を置き、医学的観点から選手へ指導を行うことで、普段のケア意識の向上に繋げたいと考える。そして、現場へケアの方法を浸透させ、MERにおける機能改善を図り、肩複合体として投球動作を遂行することで、MERのメカニカルストレス軽減を目指したい。今後、縦断的な調査を行い、投球時痛に悩む選手の減少に繋げたい。【まとめ】・約4割の選手が投球時痛を有していた・動作面への意識はあるが、機能面への意識が低かった・ケアの重要性は感じているが、実施できていない、方法が分からない選手が約4割いた・今後、MERの機能改善により、投球時のメカニカルストレス軽減に繋げたい【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会より承認を受け実施した(承認番号:1602)。