著者
増田 彰則 中山 孝史 古賀 靖之 八反丸 健二 長井 信篤 皆越 眞一 鄭 忠和
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.8, pp.581-588, 2005-08-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

慢性疼痛患者に対して, 認知行動療法とリハビリテーション, 運動療法に加えて温熱療法を併用したところ(温熱療法群n=22), 併用しなかつた群(非温熱療法群n=24)に比べ, (1)痛み行動が有意に減少した, (2)情動面では, 怒りスコアが有意に改善した, (3)治療への満足度が高かつた, (4)退院して18カ月後, 仕事に復帰した割合は, 非温熱療法群の58%に比べ温熱療法群は82%と高かつた.以上より, 慢性疼痛の治療として温熱療法の併用は有効であることが示唆された.
著者
松下 孝太 中村 裕樹 竹内 明禅 永留 篤男 八反丸 健二
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.93, 2016 (Released:2016-11-22)

【目的】 投球動作において、late cocking(LCK)~acceleration(ACL)に投球時痛が多く、さらにmaximum external rotation(MER)となる時期でストレスが増大すると報告されている。MERは、肩甲骨、胸椎、胸郭など肩複合体として機能する必要性があり、それらの動きを意識して普段のケアを行うことが重要と感じている。今後、「肩甲骨、胸椎、胸郭の投球動作への関連」という医学的観点から選手に指導を行い、ケア意識の向上とMERにおける機能改善を図りたいと考えている。そこで今回、現場での投球時痛の割合とケア意識の実態を把握するための基礎調査を研究目的とした。【方法】 対象は2016年2月時点で某大学野球部に所属していた49名(投手16名、内野手22名、外野手11名、平均年齢19.5±1.5歳)とし、アンケート調査を行った。今回は、49名中有効回答が得られた47名ついて検討した。内容は、調査時の肩・肘痛の有無、投球時痛の生じる時期、重要だと思う時期と気を付けている点(複数回答)、LCK~ACLにおいて重要だと思う部位、普段のケアの重要度とした。【結果】1)投球時痛の有無 18名(38%) 肩10名、肘5名、肩・肘3名2) 投球時痛の生じる時期 LCK~ACL:8名(44%)、LCK:5名(28%) ACL:3名(17%) follow through:2名(11%)3) 重要だと思う時期と気を付けている点 ① LCK~ACL:18名(38%) 肘下がり8名(44%)、体の開き8名(44%)、力み2名(11%) ② early cocking~LCK:13名(27%) 体の開き7名(54%)、壁を作る5名(38%)、テイクバック1名(8%) ③ wind up:11名(23%:全て投手) 軸7名(64%)、重心の位置3名(27%)、力み1名(9%) ④ その他・特になし: 5名(10%)4) LCK~ACLにおいて重要だと思う部位 特になし・分からない:34名(72%)、股:6名(13%)、肩:5人(11%)、肩甲骨:2名(4%)5) ケアの重要度 重要と感じ行っている:24名(51%)、重要だが時間がない:9名(19%)、重要だが面倒くさい:9名(19%)、重要でない:4名(9%)、重要だが、方法が分からない:1名(2%)【考察】 全体の約4割の選手が投球時痛を有していた。うち9割がLCK~ACLの痛みであり、疼痛を有する選手の約6割が「体の開き」や「肘下がり」等、動作面で気を付けていた。しかし、「体の開き」や「肘下がり」にならないようにするためには「どう動かすか」という意識する選手は少なく、LCK~ACLにおいて胸椎や胸郭を意識する選手はいなかった。また、ケアの重要性を感じていても時間がない、面倒くさい、方法が分からない選手が約4割いた。投球動作においては一連のスムーズな並進運動と回転運動が重要であるが、今後「LCK~ACLにおける肩甲骨、胸椎、胸郭の関連」に着眼点を置き、医学的観点から選手へ指導を行うことで、普段のケア意識の向上に繋げたいと考える。そして、現場へケアの方法を浸透させ、MERにおける機能改善を図り、肩複合体として投球動作を遂行することで、MERのメカニカルストレス軽減を目指したい。今後、縦断的な調査を行い、投球時痛に悩む選手の減少に繋げたい。【まとめ】・約4割の選手が投球時痛を有していた・動作面への意識はあるが、機能面への意識が低かった・ケアの重要性は感じているが、実施できていない、方法が分からない選手が約4割いた・今後、MERの機能改善により、投球時のメカニカルストレス軽減に繋げたい【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院倫理委員会より承認を受け実施した(承認番号:1602)。
著者
竹内 明禅 中村 勝徳 中村 裕樹 屋部 大輔 北 義一 迫田 馨 久米田 高宏 八反丸 健二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0181, 2004 (Released:2004-04-23)

【はじめに】 これまで足関節運動時における遠位脛腓関節(以下、遠位関節)についての文献はみられるが、近位脛腓関節(以下、近位関節)における足関節肢位の変化に伴う矢状・水平面での腓骨変位を定量的に分析しているものは少ない。 今回、健常人の足関節自動底背屈運動に伴う近位関節に着目し、CTを用い上下・前後・水平方向の腓骨変位を定量的に計測し、若干の知見を得たので報告する。【対象・方法】 下腿及び足関節周囲に既往のない健常人男性15名、検肢右側9肢・左側6肢、平均年齢25.8±2.99歳を対象とした。 1)CTは東芝社製X-VISION TSX-002Aを用い被験者を撮影台に背臥位にして膝関節完全伸展位で行った。そして、スポンジで大腿部を固定し、我々が作製した固定器具で下腿の回旋の防止に配慮した。尚、被験者にはあらかじめ被爆による身体への影響を説明し、承諾を得た。また、撮影に関しては当院の診療放射線技師が実施した。2)足関節の肢位は、最大自動背屈(以下、背屈11.3±5.6度)・中間位・最大自動底屈(以下、底屈48.8±9.3度)とし、腓骨変位量の計測は、中間位を基準とし、a上下方向:外側顆間結節を結ぶ水平線―腓骨頭尖距離b前後方向:脛骨粗面―腓骨頭尖距離c水平方向:内・外側顆後縁を結ぶ線に対しての腓骨頭隆起部と腓骨後面隆起部を結ぶ角度をPC上で行った。【結果】 1)腓骨上下方向の変位は全体の85.7%において底背屈共に上方へ移動し、変位量は上方方向を正とした場合、背屈0.29±0.77mm、底屈0.77±0.59mmとなった。2)腓骨前後方向の変位は92.9%において背屈時には後方へ、底屈時には前方へ移動し、変位量は前方方向を正とした場合、背屈-1.68±1.56mm、底屈1.89±1.43mmとなった。3)腓骨回旋方向の変位は85.7%において背屈時に外旋、底屈時には内旋方向へ移動し、変位量は内旋方向を正とした場合、背屈-1.95±4.2度、底屈3.97±3.33度となった。【考察】 今回、近位関節における足関節自動運動での腓骨変位方向及び変位量が判明した。上下方向では、底背屈時に腓骨が上方変位する傾向として、大腿二頭筋の収縮作用又は遠位関節の形状による突き上げ作用によるものか判断出来なかった。また、前後の移動が必然的に腓骨の転がりをも生じるというKelikianの報告と同様の結果となり水平方向と深い関連があることが分かった。次にJendによる遠位関節での腓骨変位量より近位関節の変位量が大きくなった要因として、腓骨の形状から考慮すると遠位部よりも近位部のほうが骨・関節面が小さい為だと考える。このことから足関節自動底背屈の際には近位関節にも付随した運動が生じ、この関節は足関節と機構的に連結していることが実証された。今後、足関節の疾患に対して遠位関節のみでなく、骨運動的に近位関節も考慮し運動療法を進めていく必要があると考える。