著者
永野 叙子 小澤 温
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.63-68, 2019-06-30 (Released:2021-02-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

【目的】市民後見人の育成の現状と支援課題を明らかにする. 【方法】市民後見人受任累計件数の多い Z 県下12か所の成年後見実施機関に対して, 訪問面接調査を実施した. 【結果】市民後見人の育成は, 市区町村の財政上の自由度にかかわらず実施されてきた. 育成課程は地域の後見ニーズによって多様であったが, 対人援助技術の習得に重きが置かれていた. ただし育成件数は, 二極化の傾向がみられた. 支援では, ケア会議の開催, 同行支援等が実施され, 支援と監督両方の業務を担う職員から負担感が聞かれた. 【結論】実施機関は, 市民後見人の活動報告に対する定期的なフィードバックを推進し, 市民後見人は活動報告に担当ケースの観察, 気づき, 実施内容等の記録を重ねていくことが, 終末期の医療判断や実施機関との情報共有に役立ち, 双方にとって有益である.
著者
永野 叙子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.78-93, 2014

本研究では,市民後見人の役割を明らかにすることを目的とした.研究方法は,半構造化面接法によって得た各種情報を集計し分析すると同時に,発言を逐語記録から記述し,エスノグラフイーを用いて再構成した.その結果,市民後見人の役割として,(1)定期的な面談によって被後見人(以下,本人)の状況把握や本人の希望を確認する,(2)本人にとっての最善を見いだす,(3)本人の能力に働きかけ発揮できるよう環境を調整する,(4)身上監護が適切に行われているかを見極める,(5)本人の権利擁護に取り組む,(6)生活者の視点で後見活動に付随したインフォーマルな支援を行う,などの状況が確認された.加えて,個人としての存在が認められ価値がある人として大切にされるよう,その人にとっての最善を共に考え,その実現に向けて支援すること,また,成年後見制度を提供する立場で意見し,より良い制度となるよう提言する役割を担っているのではないかと考えられた.