著者
岡本 隆寛
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.11-22, 2020-06-30 (Released:2020-12-01)
参考文献数
36

【目的】地域生活する統合失調症者の利用する施設・就労状況の違いやセルフスティグマ, 対人関係因子と, リカバリーレベルとの関連を明らかにすることを目的とした. 【方法】デイケア, 就労継続支援A/B型事業所, 特例子会社を利用する342名を対象に, 日本語版 Recovery Assessment Scale によるリカバリーレベルと Link スティグマ尺度, 情緒的支援ネットワーク尺度, ピアサポート経験, 趣味, 病名開示などの個人属性を評価した. 【結果】統合失調症者のリカバリーレベルは, 利用するサービスや就労状況により差異がみられなかった. 重回帰分析では, 職場や友人/医療者からの高い情緒的支援の認知, 低いセルフスティグマ, 趣味, 高年代, 初診年代の低さが有意な変数として選択された. 【結論】就労の有無や利用施設の違いよりも, 他者からの情緒的支援やセルフスティグマの軽減がリカバリーを促進する可能性が示唆された.
著者
廣田 栄子
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-15, 2022-06-30 (Released:2022-12-01)
参考文献数
44

近年では, 補聴器・人工内耳等の機器開発と医療・療育・教育領域の進歩により, 聴覚障害児者における聞き取りの向上や社会的なバリア, その支援の現状について注目されている. そこで本稿では, 日本と米国と英国, World Health Organization (WHO) の人口統計や政府統計・研究報告等を用いて, 難聴による, コミュニケーションのバリアと支援に関する法的背景と実態について紹介し, 同テーマについて展望することを目的とした. ろう/難聴児者にとって, 情報・コミュニケーションの制約は, ICF (International Classification of Functioning, Disability and Health) の生活機能の構成要素として, 幼児から高齢期の生活で重大な影響を及ぼすものと指摘されている. ICFの観点からも, 支援等に関わるリハビリテーション専門職は, 共生社会の構築に向けて, ろう/難聴児者の多様な情報・コミュニケーションのニーズに応じた, 社会的支援のあり方について理解が要請されていることが示唆される.
著者
大畑 友香 川間 健之介
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.107-115, 2019

<p>本稿は, 院内学級や訪問教育の利用が不可能な児童生徒の学習がどのように行われているのか, その課題は何であるかについて, 国内文献を概観し検討を加えた. 院内学級を利用していない児童生徒に対する学習支援として「ボランティアによるもの」, 「病院勤務者によるもの」, 「入院中の児童生徒に対する原籍校により行われるプリント配布等」, 「個別に行うもの」, 「ICT を活用するもの」が挙げられた. また院内学級の利用が不可能な理由として, 「計画的な設置が困難であること」, 「学籍移動にかかわる問題」, 「治療上の理由」が挙げられた. 入院している児童生徒に対して, 病院や原籍校から行われている学習支援には課題があり, 各々の事情に依存することになる. そして学習支援の課題を改善するためには, 国や自治体が原籍校の教員等, 入院児童生徒の周囲の人が行う学習支援の指針・具体的な方法を示すことが必要だろう.</p>
著者
山ノ上 奏 川間 健之介 中津 真美
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.156-166, 2019-12-25 (Released:2021-02-28)
参考文献数
23

【目的】脳性まひ者の就労状況と二次障害の変容を明らかにすることを目的とする. 【方法】現在, 一般就労している, または過去に就労していた20歳代から50歳代の脳性まひ者11名を対象とした. インタビュー調査で得られたデータは, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) 手法により分析を実施した. 【結果】脳性まひ者の叙述から就労に関わる二次障害の概念が生成された. 脳性まひ者は二次障害と機能低下への対応の必要性に気づき, 就労と自身の身体の変化を再考する経緯が認められた. これは脳性まひ者にとって仕事に影響を与える重要な側面であり, 二次障害の変容に合わせて就労意欲を維持することが重要という概念図が得られた. 【結論】脳性まひ者は, 仕事に意欲ややりがいをもって働いているが, 二次障害による身体の変化に合わせて, 就労状況を変えることが就労意欲の維持につながる.
著者
永野 叙子 小澤 温
出版者
日本リハビリテーション連携科学学会
雑誌
リハビリテーション連携科学 (ISSN:18807348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.63-68, 2019-06-30 (Released:2021-02-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

【目的】市民後見人の育成の現状と支援課題を明らかにする. 【方法】市民後見人受任累計件数の多い Z 県下12か所の成年後見実施機関に対して, 訪問面接調査を実施した. 【結果】市民後見人の育成は, 市区町村の財政上の自由度にかかわらず実施されてきた. 育成課程は地域の後見ニーズによって多様であったが, 対人援助技術の習得に重きが置かれていた. ただし育成件数は, 二極化の傾向がみられた. 支援では, ケア会議の開催, 同行支援等が実施され, 支援と監督両方の業務を担う職員から負担感が聞かれた. 【結論】実施機関は, 市民後見人の活動報告に対する定期的なフィードバックを推進し, 市民後見人は活動報告に担当ケースの観察, 気づき, 実施内容等の記録を重ねていくことが, 終末期の医療判断や実施機関との情報共有に役立ち, 双方にとって有益である.