著者
汐海 沙知子
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

中国雲南地方の在来品種である「麗江新団黒谷」は、「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」などの日本の強度耐冷性品種を上回る極強の耐冷性を有することが知られている(。申請者らはこれまでに「麗江新団黒谷」と「ひとめぼれ」の交配後代系統を用いてQTL解析を行ってきており、2年間の反復をとった耐冷性検定の結果から第3染色体長腕に「麗江新団黒谷」型の対立遺伝子の作用による耐冷性QTLを確認した。さらに染色体部分置換系統を作成し、候補領域内で組換えが生じている系統10系統を選抜して、2008年度および2009年度の2年間の反復をとった耐冷性検定の結果から候補領域を約1.2Mbの領域に絞り込んだ。この領域について「麗江新団黒谷」の塩基配列を決定して「日本晴」と比較したところ、ミスセシス変異を起こすSNPが6遺伝子に生じていた。これらのSNPについて、dot-blot-SNPマーカー化し、「麗江新団黒谷」と「ひとめぼれ」の遺伝子型を調べてところ、「ひとめぼれ」は全て「日本晴」型であった。また、推定遺伝子領域の上流5kb以内にSNPが存在る遺伝子について、「ひとめぼれ」及び準同質遺伝子系統の穂ばらみ期穎花からRNAを抽出して発現解析を行ったところ、両者で発現量に大きな差が見られるのはなかった。本研究では、「麗江新団黒谷」に由来する強度耐冷性の候補遺伝子を6遺伝子に絞り込むことができた。今後これらについて相補性試験等を進めることで、耐冷性遺伝子を単離できる可能性が高い。また、研究の過程で作成した準同質遺伝子系統は、実際に「ひとめぼれ」に比べて耐冷性程度が向上していることを確認しており、耐冷性育種にも貢献できると期待される。