著者
江 利紅
出版者
日本比較法研究所
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.123-163, 2012-06-30

社会主義国である中国には、人民代表大会制度は国の根本的な政治制度として確立されている。人民代表大会制度は、「すべての国家権力は人民に属する」という「人民主権」の原則をその基本原則とし、「民主集中制」をその組織原則とする。これらの原則に基づき、人民の民主的権利の実現の制度、選挙制度、国家機関の選出制度および地方制度などの具体的な制度が構築される。これらの制度によって人民代表大会制度は構成される。しかし、中国では、立法権、行政権、司法権の間で相互に抑制と均衡を保つ「三権分立」の原理を否定し、「民主集中制」に基づき、統一の国家権力のもとで各国家機関間の「分工(分業)」を認める。「分工(分業)」によって、中国では、各国家機関間の分立、相互の抑制・均衡作用が否定され、人民代表大会による監督のみが認められる一方、各国家機関間の同質性や協力性が強調される。そのため、現実中、国家機関の権力の抑制や国民の権利の保障は十分であるとはいえない。これらの問題を解決するために、人民代表大会制度を維持するという前提のもとで、人民代表大会制度を改革しなければならない。今後、人民代表大会の統一的な指導のもとで、各国家機関間の相互抑制・均衡作用を重視し、特に人民代表大会の地位を高め、法制度の整備を強化し、司法の独立と公正を保障し、法の執行を徹底し、行政機関の活動を法的に統制する努力を積み重ねなければならない。そして、人民代表大会の機能改革以外で、選挙制度、代表制度、立法制度、監督制度、政党制度、地方制度などについても、改革を着実に遂行しなければならない。