著者
江 東林
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本年度では、デンドリマールテニウムポルフィリン錯体中心のルテニウム上で、赤外照射により酸素分子の活性化が触媒的に起こるという特異な現象を見いだした。一連のサイズの異なるデンドリマールテニウムポルフィリン錯体をピリジンと共存させ、系内に酸素をバブリングしながら、赤外線を照射した。その結果、サイズの大きなデンドリマールテニウムポルフィリン錯体の系では、酸素添加反応が起こり、触媒的にピリジンオキシドを与えました。これに対して、サイズの小さなデンドリマールテニウムポルフィリンを用いた場合、ピリジンオキシドの生成は全く観察されなかった。また、基質として、ジメチルスルファイドを用いた場合も、上述と同じ現象が観察された。詳しい検討から、サイズの大きなデンドリマールテニウムポルフィリンは赤外線捕集アンテナとして機能し、吸収した赤外線エネルギーをコアに送り込み、化学反応を引き起こすということが分かった。これは、今まで全く利用されることのなかった赤外線を用いた分子状酸素活性化のアプローチであり、新しいタイプの人工光合成と言える。