著者
江利口 耕治
出版者
日本保険学会
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.620, pp.620_131-620_149, 2013

2011年に発生した東日本大震災,タイ洪水をはじめ過去の自然災害による高額損害における再保険の寄与度は一定水準に達しており,巨大災害にかかわる保険金支払いにおいて再保険は大きく貢献している。<BR>2011年度は,自然災害の多発を受け再保険会社の事業成績は悪化,コンバインド・レシオが100%を超過する再保険者も多数出た。こうしたなか迎えた2012年度の再保険の特約(契約)更改では一定の料率上昇が見られ,再保険マーケット・ハード化の兆しも見られた。<BR>想定外を排除し,あらゆるリスクに備えることが巨大災害における再保険金支払いを確実にするとともに,再保険キャパシティの裏づけとなる担保力維持に繁がる。こうした観点から,包括的な取引形態である特約再保険の取引においては,出再されるリスクに関するより高度な情報開示や,契約条件の強化が求められている。