著者
江口 豊明 長谷川 幸雄
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.8, pp.530-536, 2004-08-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
18

原子間力顕微鏡(AFM)は,探針先端と試料表面との間に働く力をプローブとして用いるため,走査トンネル顕微鏡(STM)とは異なり,絶縁性の試料も観察可能である.近年では力検出技術の発展によりAFMでも真の原子像観察が可能となったが,その分解能は未だSTMに比べ劣るとされてきた.これはAFMで検出する力には,原子分解能を与える短距離力(化学結合力)の他に,ファン・デル・ワールス力や静電気力といった長距離力が含まれていることに起因する.我々は短距離力を優先的に抽出できる実験条件を設定することで,STMと同レベルの高分解能AFM観察を行うことに成功した.本稿では,AFMの高分解能化のためのアイデアと,それに基づく実際の実験結果について解説する.