著者
徳永 哲 江口 雅子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.72-85, 2004-02-28

本研究は学生の英語リスニング能力を向上させるのに、いかにTOEICのリスニング・セクションPart II及びIIIの問題が使われうるか考察するものである。応答問題のPart II及びIIIの問題を取り上げるのは、コミュニケーションの場における実践につながるリスニング能力を向上させることができ、自然なコミュニケーションにおける応答能力を強化することになると考えられるからである。しかし、リスニング能力に関してまだ未熟な段階にある学生に対してTOEICレベルの問題をさせてみても、リスニング能力が向上するのは非常に難しいと思われる。ではいかにすれば能力向上につなげることができるか。私たち徳永と江口は共同してその方法を研究し、さらに学生に情報提供者になってもらってデータをとって研究を実践した。その研究と実践および結果をここにまとめた。データの対象は2年生のセミナー・グループから成る11名の学生である。データは、リスニング・スキルに関するセルフ・リポート(授業による、学生の進度状況)から成る。授業はリスニング能力向上の為の方法として、3つの活動を取り入れた。1) Warm-up Activity 2) Listening Activity 3) Check-up Activityである。Warm-up Activityでは、事前に学生にヒントを与えた。Listening Activityでは、ディクテーションによりPart II及びIIIの質問文を書きとらせてから、問題のリスニングに集中した。Check-up Activityでは、学生の答えを正し、リスニング能力をチェックした。データとして、週1回の授業で13回分のリスニング・スコアを集積した。冬休みが終わってから、学生にアンケートに答えてもらった。アンケートは、日頃の英語との取り組み方と冬休みのリスニングの宿題との取り組み方に関するものである。アンケートから得たデータによると学生がリスニングに費やした時間はさまざまだった。1月中旬に、再び、学生に同じ練習問題を解いてもらった。受講生の内、5名の学生が、10%から20%の範囲内で、正解率を上げた。5名の中で最も正解率が高かった学生は、70%以上の正解率だった。その学生は冬休みの間、毎日、宿題として課したTOEIC Part II及びIIIの応答問題を長い間、聞いていたことがわかった。我々は練習問題と学生に課した宿題からいい結果を得た。又、長い間、応答問題を聞き続けた結果、一つ一つの単語を聞き取るレベルを超えて、対話全体を聞き取れるレベルになり、リスニング能力が伸びたこともわかった。