著者
松田 麗子 マツダ レイコ Matsuda Reiko 江尻 晴美 エジリ ハルミ Ejiri Harumi 中山 奈津紀 ナカヤマ ナツキ Nakayama Natsuki 梅田 奈歩 ウメダ ナオ Umeda Nao 牧野 典子 マキノ ツネコ Makino Tsuneko
出版者
中部大学生命健康科学研究所
雑誌
生命健康科学研究所紀要 (ISSN:18803040)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.42-48, 2016-03

本研究の目的は、術後患者の観察場面を設定したシミュレーション演習における学生の体験を構造化して特徴を明らかにし、教育への示唆を得ることである。対象は、看護系大学3・4年次生で、術後患者の観察が未経験の学生24名である。演習の課題は、術後患者の呼吸を観察して、その内容を教員に報告することである。演習終了後、1人20分程度の半構造的面接を1回行った。面接内容は対象者の承諾を得てICレコーダに録音し、逐語録を作成してテキストデータとした。テキストデータはテキストマイニングソフト「KH Coder」を使用し分析を行った。総抽出語数と文章数はそれぞれ288,65語、2,610文であった。頻出語分析、共起ネットワーク分析、階層的クラスター分析の結果「経験から体得する」「観察不足に自ら気づく」「念のために全部観察する」「他者の評価を気にして緊張する」「急性期看護学実習に備える」の5クラスターにまとめられた。内容を検討した結果、この演習は実際に体を使うことで身に付くという経験から体得する演習であったこと、急性期看護学臨地実習に備え必要な演習であったと価値を見出していた。今後の課題として、(1)学生自身が自らを振り返り、課題を見出すためのディスカッションができるデブリーフィングの充実、(2)学生が見出した課題を試す場を設定する必要性、(3)トレーニングを目的としたシミュレーションの演習では、学生が緊張しないための場の雰囲気作りをする必要性などが示唆された。
著者
江尻 晴美
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.543-547, 2008-10-01 (Released:2009-04-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

せん妄は,身体的原因により短期間に発現して時間とともに変動する,注意力や意識レベルの障害と睡眠覚醒障害を伴った認知機能の変化である。今回,ICU滞在中にせん妄を発症した患者において,その後,せん妄に対する患者の思いを直接聞くことができたので報告する。症例は,60歳代前半の男性。修正大血管転位症のため左側房室弁置換術,心房細動根治術を受け,術後2日目よりせん妄を発症した。悲観的,抵抗・拒絶,見当識障害が認められたが,家族が介入すると現実認知が可能であった。術後8日目,「大変見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした」と涙を流した。このときの患者の言動から,見当識障害,会話の障害など,せん妄患者によく認められる現象が患者にとって苦痛で辛いものであることがわかった。看護スタッフはその気持ちを理解して援助する必要性が示唆された。